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2007年05月13日

テロ?

 昨日の「院長ブログ」で、麻疹の流行が問題になっていることを書きました。首都圏を中心に、大学生などでの発生が多発しているというものです。

 日本は世界中で「麻疹対策後進国」です。欧米を中心に、いわゆる先進国では麻疹は「根絶寸前」まで来ています。例えばアメリカでは年間の麻疹発生数は100人以下。その大半は、海外から持ち込まれたものです。

 この話題も以前紹介したことがありますが、アメリカの人気テレビ番組「ER(緊急救命室)」で麻疹の発生が取り上げられた時、そこにいた医師は全て、麻疹患者を診たことがありませんでした。ネルソンという分厚い小児科学の教科書を医局から持ち出し、議論した末の診断は「麻疹」。

 その瞬間から患者を隔離するのはもちろん、外来を閉鎖し、接触のあった医師や看護師なども免疫の状態が分かるまで他の人たちとの接触を禁じられました。「危機管理」の対応が素早く、きちんとできていることを、テレビドラマとはいえ、うらやましく思ったものでした。

 日本では、まだまだ麻疹が多発しています。アメリカのように患者を診たら必ず報告するというシステムになっていないので、推測でしか分かりませんが、おそらく年間数万人の規模で発生しているのではないか、とも言われています。昨年度より麻疹・風疹ワクチンを幼児期に2回接種するようになり、接種率も向上してきているので、ここ数年間は「数千人」になってきた、という見方もありますが、それでもまだ多発しているのは事実です。

 例えばアメリカでは、日本は「麻疹の輸出国」として批判され、恐れられています。先進国とは名ばかりで、麻疹対策もきちんとできていないからです。日本からの旅行客が現地で麻疹を発症し(潜伏期は約10日あります)、アメリカ国内で伝染させることもあります。アメリカからの観光客が、日本に滞在中に麻疹に罹患した例もあります。

 アメリカ国内で麻疹患者が発生すると、必ず届け出なければならないことになっていますが、さらに、その患者からウイルスを採取し、詳しく分析をします。ウイルスの遺伝子情報を調べると、どこの国で発生している麻疹ウイルスなのかを知ることできます。アメリカでは、日本の麻疹ウイルスがそうとう検出されるというのです。
 
 アメリカでは生物テロに対しても警戒を強めています。一番心配をしているのが「天然痘」です。種痘というワクチンを世界中で徹底して行ったために、すでに地球上から根絶することができたとされています。現在は種痘を行っていないので、天然痘に対する免疫を持たない人たちの方が多くなっています。もし地球のどこかで「天然痘ウイルス」が生き残っていて、それをテロリストが手に入れ、大都市の真ん中でばらまいたとしたら・・とてつもなく大きな被害と、社会の混乱を引き起こすことになるでしょう。

 すでに自然界には存在しないはずの天然痘ウイルスですが、研究施設の中にはまだ残っています。アメリカ、イギリス、ロシアの3か所だそうです。厳重に管理されているはずなのですが、どうもロシアの管理体制には問題があるようだ・・などといった話も伝えられています。心配になります。

 こんな話を持ち出したのはわけがあります。もしかして、今回の日本の麻疹騒動は、日本へのテロなのではないか。そんな想像が、頭をよぎったのです。

 病気の程度から言えば、天然痘より麻疹の方がはるかに重症です。命に関わることが少なくありません。合併症もあります。伝染力が強く、集団の中でひとたび流行が始まると、それを阻止するのはなかなか難しいです。そんな「破壊力のある感染症」ですから、生物テロの道具としては麻疹ウイルスの方が優れているともいえます。

 ただし、多くの先進国ではワクチンを徹底して行っているので、仮に麻疹ウイルスをばらまいたとしても、実際に患者が多発することはなさそうです。しかし、日本は違います。今回の流行でも分かるとおり、成人の中でかなりの人が麻疹に対する免疫を持っていません(2割はいるようです)。

 日本は麻疹ウイルスによるテロのかっこうの標的だということになりはしないでしょうか。そして、もしかしたら、今回の流行が日本をねらった生物テロが実行されたことによるものだったのではないか・・。

 もちろん、これは私の“妄想”なのだと思います。でも、日本はそんな脆さを持っているということを、しっかりと認識してほしいと思っています。

投稿者 tsukada : 2007年05月13日 21:10