2007年05月12日
麻疹流行
東京を中心に、全国で麻疹患者が多数出ています。数年ぶりの大流行になりそうで、十分な警戒が必要です。
今回の流行は、15歳以上の方に多いのが特徴のようです。流行は学校施設で発生している例が多いようですが、とくに大学での発生が問題になっています。
手元の新聞記事では、上智大学で10人の感染者が発生し、全学休校を実施したとのこと。明星大学で4人が感染、創価大学では53人が感染し、やはり関係する講座の「閉鎖」や全学休講をしています。
流行が始まったところでは、施設を閉鎖し、それ以上感染が拡大しない対策はとても重要です。麻疹はきわめて感染力が強いため、一人でも患者がでるとその周囲に次々と伝播していきます。接触を避けるのは、流行阻止の大原則。
その期間は「10日以上」必要です。麻疹の潜伏期が10日程度だからです。初期症状は発熱を伴う風邪症状ですので、もし熱などの症状があれば登校を禁じ、自宅安静を指示します。
もし症状が強ければ医療機関への受診が必要になりますが、その際にもほかの方への感染を予防する意味で、あらかじめ病医院に連絡をとり、受診方法について指示をもらってください(隔離扱い)。麻疹であれば、当然完全に治癒したのちからの登校になります。医師の許可が必要です。
最終的に麻疹でない場合もあるでしょうが、その判断をするためにも、解熱後2日程度はまだ登校を控えてほしいと思います。麻疹の経過中、いったん解熱したかに見えても、翌日に再発熱し、症状がさらに悪化する例がよくあるからです。
こういった対策を全ての学校や団体、あるいは会社などできちんととれているかどうか、心配です。新聞記事に出ている例は一部の例であり、もしかしたら麻疹患者が発生し、流行のおそれがあるにもかかわらず(あるいはすでに流行が始まっているにもかかわらず)何も対策をとっていないところがあるかもしれません。
「危機管理」がきちんとできないことが多い日本ですから、「無策」のままでいる方が多いかも。心配になります。
でも、さきほどの記事の中で感心する点もありました。創価大学では学生約6,000人にワクチン接種を行ったというのです。大阪でも専門学校で流行があり、そこでの対策として学生・教職員652人にワクチンを接種したという報道が、別の日に載っています。
そうなんです。あらかじめワクチン接種をしてあれば、ほぼ確実に麻疹を予防できます。通常は幼児に行うものですが、ワクチン接種を受けていなかったり、受けていても1回だけの場合には(以前の日本ではその体制でした)免疫がないか、不十分のことがあります。麻疹にかからないようにする唯一の方法が、ワクチン接種です。
大学などで大規模の予防接種を行うのは、日本では異例です。一部の学校ではありますが、積極的に、そして早期に集団接種を行うことができたことは、今後の良い教訓になると思います。これを期に「麻疹流行時の危機管理対応」としてしっかりとしたものができることを期待したいと思います。
さて、この「院長ブログ」をお読みの方は、おそらくは大人の方だと思います。麻疹に対する免疫は十分にもっていますか? 医療機関で検査を受けることができます(自費診療)。もし免疫が不十分であれば、今すぐにでもワクチン接種を受けて下さい(これも自費)。検査をせずに麻疹ワクチンを接種することもできます。
麻疹は大病です。ときには命に関わります。そして、もし患者が出ると、その周囲に伝染させ、あらたな患者を作り出す可能性が大きいです。麻疹にかかってしまうとその人は「被害者」と言えるでしょうが、同時の「加害者」にもなりうるのです。
その意味で、ワクチン接種をきちんと受けるのは、自分を守るだけではなく、周りの家族、子どもたち、友人、そして所属する団体、さらに地域や社会を守ることにつながります。「社会的責任」があるのだとも言っていいと思います。
さあ、来週はみんなで病医院へ行き、ワクチンを受けましょう!!
投稿者 tsukada : 2007年05月12日 23:59