2007年06月25日
偽装牛肉
このところ、考えられないような事件が続いているおきているように思います。あまりに大きな問題をかかえていて、この「院長ブログ」でもなかなか取り上げることができないうちに、どんどん新しいものが加わっています。
コムスンのこと、社会保険庁や年金のことも“先送り”したまま。私自身も不消化で、胸焼けがしているかのようです。
先月の「麻疹」騒ぎも一段落したようです(といっても、流行の程度が下火になり、ニュースにならなくなっただけであり、本質的な制度改革や「見捨てられた世代」に対する対策は何ら手つかずですが)。今月の「いじめ根絶県民集会」も形の上では終わりました(まだ取り上げなければいけない論点がいくつもあるのですが、私の根気が続いていません)。
そこで「社会問題」も少しずつ取り上げてみることにします。今日は「偽装牛肉」です。
北海道のある食品加工卸会社が、牛肉と偽って豚肉や鶏肉などを混じていたという事件です。ここ数日の報道では、その「偽装」は底なし状態。なかには「牛肉の入っていない牛肉」もあったとか。
社長はこの問題が表面化した当初は、たまたま混じっただけという説明をしていました。それが連日の問題表面化で、最終的には自分の指示で偽装をしていたと認めざるをえませんでした。警察や農林水産省などの捜査や調査の結果がいずれはっきりするでしょう。刑事責任を問われるのは必至です。
今日の報道では、会社は休業に入り、営業再開のめどが立たないので、全従業員の解雇を通知したということです。突然の事態にとまどっている従業員は、大変なことだとは思うのですが、どうしても納得できないことがあります。そのために、同情する気持ちにはまだなりません。
それは、従業員もこの偽装などに関わってこなかったのか、という疑問です。社長が指示したこととはいえ、それがどんなことを意味することであるか、管理職にあるものはもちろんのこと、一般の従業員にも分かっていたのではないか、と考えざるをえないのです。実際の偽装作業をしていたのは誰だったのでしょう。自分の仕事の結果を全く知らずに作業をし続けることなど、できるのでしょうか。
牛肉に他の肉を混ぜる作業をして、そこから出てくる製品パッケージに「牛肉100%」と表示されていれば、それはおかしいぞ、と思うはずです。「国産肉」を作る行程で、外国産肉を入れていれば、ヘンだと気づくはずです。
ある新聞には「工場内では公然の秘密」とありました。従業員はみんな知っていたという報道です。それが真実かどうか、どの範囲の従業員が知っていたのか、正確なことは分かりませんが、でもあながち間違いではないと思うのです。
そうであれば、従業員はどうしてそれを問題にしなかったのでしょうか。知っていて知らないふりをしていたのでしょうか。誰にも話したり、相談したりしなかったのでしょうか。
実際には農林水産省の出先機関に、現物の偽装肉を持って“告発”しに行った元幹部職員もいたということでした。でも、その肉を受け取ってもらえず、まともに取り合ってくれなかったとか。門前払い。その後の公的書類には「疑問を特定できなかった」とか。そりゃそうでしょう、何も調べなかったのですから。
そうであれば、監督官庁の「不作為の不法行為」も問題になります。当然するべき対応をしていれば、もっと早く偽装を見つけ、不正を止めさせることができたはずなのですから。
一番悪いのはこの社長であり、会社です。それは当然です。でも、残念ながら「悪意のある人」は必ず存在します。それをどこで見つけ出し、正していくのか。歯止めをかけるには、誰が何をすればいいのか。
それは、その不正を見つけた人が声を出すことしかありません。周囲にいてそのことに気づいた人が、直接やめさせることができなくても、「知っていること」をかくさず、オープンにすることができれば、ずいぶんと事態は変わってくることでしょう。
みんなが注視しているという状況を作ることで、不正は行いづらくなります。光がさしこむことで、闇は消えていきます。悪意があっても、それを発揮させることができなくなります。
問題解決の道筋はハッキリしています。問題は、一人一人の人間です。悪意はなくても、何もしないことで結果として悪意を増幅してしまうことがあります。結果論ではありますが、「間接的な(消極的な)加担者」になってしまうこともあります。一歩前に進んでみること。それをみんながすることが、社会を良い方向に進めるんだと思います。
こんな話をすると言われてしまいそうです。「塚田の言うことは正論かもしれないが、それが通じないのがこの世の中なのだ」と。そう簡単に変われることではないことは分かっています。でも、何もしなければ変わりません。問題に気づいた人が、少しでも前に進み出る勇気をもつことが、やっぱり必要なのだと思うのですが、いかがでしょう。
投稿者 tsukada : 2007年06月25日 22:36