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2007年07月06日
浴槽用浮き輪
こんな商品があるとは知りませんでした。「浴槽用浮き輪」。親が乳幼児と入浴するときに使用するものだとか。
首のすわった赤ちゃん(おそらく4か月以上)に使用でき、浴槽内に浮かべたこの浮き輪に赤ちゃんを入れておくと、一人で“入浴”できるというもの。
しかし、まれにひっくりかえってしまい、そのまま溺水する事故が発生しているというのです。死亡例や、高度の後遺障害を患っている赤ちゃんもいるということで、今回、「使用しないように」という警告が出されました。
親が一人でお風呂に入れるときには、確かに便利そう。自分が体や髪を洗うときに、一時的に赤ちゃんから手を離せるからです。でも、もし浮き輪がひっくり返ってしまったら・・ただちに救いあげれば大事にいたることはないでしょう。
重大な事故になるのは、そのままの状態が数分以上続いてしまったときです。救命処置をほどこしても、完全に回復することができないような脳障害をきたすことは十分に考えられます。
「親が手を離していても安全でいられるように作られた」道具のはずなのに、逆に「危険」であるのはどうしてなのでしょう。肝心なのは「目を離す」かどうかです。
この浴槽用浮き輪に赤ちゃんを乗せて浴槽に浮かべたまま、親が浴室から出て行ってしまうことがあれば、非常識すぎます。それは論外としても、絶えず見守っていなければいけないのにそれを行ってしまったときに、“悪魔の手”が忍び寄ってくる機会を作ってしまいます。
親が体を洗うのであれば、赤ちゃんの様子を見続けることができます。万一ひっくり返っても、すぐに気づき、助けることが可能です。問題は洗髪でしょう。時間にして数分かもしれませんが、その間、赤ちゃんを見ることはできません。シャワーを出していれば、異常な音を聞くこともできないでしょう。そして、その間に赤ちゃんが溺水しているということも、十分に予想されます。
この商品の致命的な欠陥は、それが「親の利便性」を打ち出していることです。ひっくり返る事故が起こりうることを考えると、一緒に入浴する大人にとって便利が良いということが大きな落とし穴になっています。
実は私も子育てし始めたころ、似たような体験をしたことがあります。強い近視の私は眼鏡族。いつも眼鏡をかけています。でもお風呂に入るときにはかけていなかったのですが、ある時、浴槽の縁につかまり立ちした我が子(おそらく1歳少し前でしょう)が浴槽内に頭から落っこちるということがありました。私が自分の体を洗っている最中です。
横にいた子が、急に視界から消えました。一瞬何がおきたのか分からなかったことを、今でも鮮明に記憶しています。眼鏡をかけていなかったので、浴槽内に転落した子どもに気づくのが、ほんの少しの間ではありますが、遅れてしまいました。
ただちに子どもを引き上げたので無事でしたが、子どもは大泣きし、私は冷や汗で泣きたいような気持ちになったものです。それ以来、子どもと入浴するときには眼鏡を外さないようにしていました。
今回問題になった「浴槽用浮き輪」には、“構造的な欠陥”があります。もしどうしても使用したいというのであれば、絶対に一時たりとも目を離さないということが条件になるでしょう。体を洗うのはOK。洗髪は・・NGです。どうしても「目を離す」時間が生じるからです。
では洗髪はどうすればいいか・・別に洗面台で洗いましょう。シャンプードレッサーになっている洗面台を使えば可能です。もちろん、夫婦や祖父母が協力して入浴介助をしてくれるなら問題はありませんが(それができるのなら、そもそもこの商品を使う必要もないわけですが)。
このような事故例が公表され、商品に対して警告が出されても、メーカーに対する拘束力はなく、「善意」に頼るだけです。先に窒息が多発しているとして問題になった「こんにゃく入りゼリー」と同じように、行政やメーカーがすぐにきちんと対応してくれるかどうか、怪しいものです。
いや、こんにゃく入りゼリーよりもっと大きな問題があります。それは、もし新たな生産しないということが決まっても、すでに売られた商品が家庭の中で引き続き使用されることを止めることができない点です。それ以上は、使う方がきちんとした判断力をもって対処してもらうことを期待するだけです。それは、無理なことでしょう。
そうであれば、これからも浴槽用浮き輪による事故はどこかで起きてしまうことが予想されます。そして、不幸な事態に子どもたちとご家庭が巻き込まれることも。困ったことです。
投稿者 tsukada : 2007年07月06日 23:59