2007年07月13日
見捨てられた世代
昨日の「院長ブログ」で書いたように、来年度から5年間で日本から麻疹を根絶する対策がとられることになります。学童や生徒など、現在の麻疹予防接種体制の対象外になっている子どもたちに対して予防接種を行うというものです。
日本では長らく麻疹予防接種は1回きりでした。欧米など、日本を除く先進国のほとんどは初めから2回の接種を行っていました。そしてそのツケが、今春、首都圏の大学生の中での麻疹流行に回ってきていました。
昨年度から2回法になりましたが、その決定があまりに遅きに失したというのが、私たち小児科医の思いです。そして、その際に小学生以上に対して何も手を打たなかったのも、大きな問題でした。
来年度から5年かかって、「見捨てられた世代」に対する麻疹ワクチンの接種をすることになりました。今までの経過からすれば、大きな前進ではありますが、でもまだ数年先までは麻疹流行が繰り返しおきる可能性が大きいことを考えると、そんな悠長なことでいいのか!?と考え込んでしまいます。
日本は経済大国であり、先進国であるというのが「一般常識」になっていますが、本当にそうなのかと疑ってしまうことが時々あります。麻疹対策についてもそうです。
過去のことは別にしても、もっと短期間で対策をとることができないものかと思います。来年度からということですが、早くて8か月ほど先のことです。今年度の途中から、少しでもその対策を始めることができないものでしょうか。お金があり、知恵がある国であれば、容易にできそうだと思うのですが、なかなかできないのはどうしてなのでしょう。
「見捨てられた世代」に光を当てたという意味で、大きな意味をもつ政策です。でも、その中身はまだまだ議論の余地があるように思います。せっかく行うのですから、「やった」という形を作るだけで終わることのないようにお願いします。
その対策に実行が伴わないのであれば、一度「見捨てられた世代」をもう一度見捨ててしまうことになりかねません。そんな危惧を抱いてしまうのは、私の心配しすぎでしょうか。
投稿者 tsukada : 2007年07月13日 19:44