« 世界の子どもにワクチンを | メイン | 雨の被災地 »
2007年07月19日
原発事故
今日の上越市は30度を超える真夏日になりました。仕事柄一日中室内にいますが、それでも汗ばんできます。クーラーはずっとつけたまま。夜になってもクーラーのお世話になっているほどです。
隣の柏崎市でも暑い一日だったようです。被災地ではまだ電気も水道もとまったままのところが多数あります。冷房の設備のない避難所暮らしは、さぞ辛いことでしょう。クーラーを使えることが、申し訳なく感じるほどです。
中越沖地震の発生から丸3日がたちました。疲れもそうとうたまってきていることでしょう。生活環境も、気象条件も悪くなる一方です。病気にならないようにするためにも、1日も早く「普通の生活」に戻れることを心より祈っております。
今回の地震で特徴的なことの一つは、日本の電力に関わっていることでしょう。日本有数の大規模な原子力発電所があり、その直下で大地震がおきました。国や電力会社が安全だと言い続けてきた原発が、実はこんなにも地震に弱かったのかと思い知られています。
当日の火災の様子は、ヘリコプターからの中継で日本中にリアルタイムに報道されました。でも、消火活動は行われず、消防署から消防車が到着して消火をし、鎮火するまで2時間もかかりました。その間、「なぜ火を消そうとしないのか?」「自前の消防車はないのか?」「職員は何をしているのか?」と、いらだちを覚えながらテレビの中継を見守っていました。
一瞬思い出したのが、愛知県での銃撃事件です。暴力団組員に銃で撃たれた警官が、救助されることなく、現場に数時間も“放置”された事件です。このときもヘリからの映像が、日本中に衝撃をもたらしました。「警察は彼を見殺しにするのか!?」と。
ある意味で怖い時代です。現場にいる者や関係者は事態を見極めることができず、手をこまねいている一方で、その様子がリアルタイムに日本中、そして世界中へ向けて配信され、私たち一般の人に知れ渡ります。生の映像は、何より強いインパクトを与えます。
その中で一度できた「印象」は、あとでどのように話しても払拭することはできません。ときには言い訳にように聞こえることで、よけいに「印象」を悪化させます。
今回の原発事故では、その後に多数のトラブルが報告されています。まだまだ出てきそうですし、全容が分かるのはそうとう先になるかもしれません。それが全て明らかになり、きちんと説明され、そして完璧に対策が整ったとしても、私たちに植え付けられた「印象」が変わることは、難しいでしょう。
原子力発電について言えば、これはまだ技術的に完成されたものではないことを大前提に物事を進める必要があります。通常の運転はできますし、大きな電気をそこから得ることができるようになっています。
でも、万一の事故が発生すると、その影響は計り知れないものがあります。ソ連のチェルノブイリの事故、アメリカのスリーマイル島の事故を持ち出すまでもなく、原発事故は大きな範囲に壊滅的な事態を引き起こします。
そういった事故を起こさないような対策が、完璧にできることはありません。「安全」だと言っているのは、一定の条件の範囲内で大きな事故にならないように設計されているというだけです。その条件が違ってくれば、何が起きるか、誰にも分かりません。「想定の範囲」を少しずつ広げていくことはできますが、無限に拡大することは不可能なことです。
その時点での「想定の範囲」がどのようなものであるかをハッキリさせた上で、それを逸脱する「想定外」のことが起こりうることを認める必要があります。今回の地震が、近くにはないはずの活断層によって引き起こされた(それも真下にあるのだという!!)ことが、何よりそれを雄弁に物語っています。
原発から出ている「核の廃棄物」についても、何も対策がないまま運転が続けられています。大量に出てくる「汚れたゴミ」を適切に処理する技術もないので、今はそれを貯め込んでいるだけ。今回の事故では、その中から放射能が外部に漏れ出てしまいました。
当面はそれを施設内でプールしておくにしても、いずれ満杯になるのは目に見えています。問題を先送りして、いずれ新しい技術や解決策がでてくるのを待てば良いと考えるのは、楽観主義者ではなく、途方もない大馬鹿者のすること。未来に対して、今の社会が無責任さを押しつけているだけです。
こんな点でも、現在の原子力発電はまだ試験段階。営業運転することがそもそも大問題なのですが、運転するにしてもさまざまなトラブルが起きることを前提にしていなければいけません。「絶対に安全だ」と言い放つのは、きわめて危険な行動です。今回の原発事故は、それを証明しています。
でも、ここまで大きな問題になっても、こんなふうに根本から考え直すことはしないのでしょうね。すでに日本の電力の何割かを原子力に依存している状況があります。だから原子力発電は止められない、という論理・・そこが根本的におかしいのだと思います。
ところで柏崎にある原発は「東京電力」のもの。主に首都圏に送電しています(柏崎市から始まって、日本列島を横断する巨大な送電線があります)。地元の新潟県は「東北電力」が担当していて、柏崎原発のお世話にはなっていません。でも、その「恐怖」にさらされているのは、私たち新潟県民です。
もし原発が絶対に安全だというのであれば、どうして関東に作らないのか、いつも不思議に思っていました。実は危険なものだと分かっていたので、自分たちのところには作らなかった・・そんなうがった見方もありますが、残念ながら今回の原発事故は、それもあながち間違いではないことを証明してしまったようです。
投稿者 tsukada : 2007年07月19日 21:29