2007年07月20日
雨の被災地
昨日は気温が上がり暑い一日でしたが、今日は雨模様。気温はさほど下がらず、湿度が高まるばかりで、蒸し暑い一日でした。中越沖地震の被災地は、さぞ過ごしにくかったことでしょう。
今回の地震で柏崎原発が全面操業停止に陥りました。消防法の規定により柏崎市長は施設の一部を危険と指摘し、使用停止命令も出されています。しかし、これは原子力発電についての規定としてではないことに、注目する必要があります。あくまでも「地元の消防署の判断」。原子力と規制する国の仕事として、きちんと原発を指導・監督できていないことを象徴しているように思えて、皮肉です。
国や東京電力の心配事は、もっぱら夏場の電力事情です。よその県に作っておいた原発が使えなくなったので、電力需要が高まる猛暑をどうすれば乗り切れるかというのが、今の関心事。放射能汚染におびえる「よその人たち」を思いやることはできないようです。
確かに電力の安定供給は国に一大事です。もし十分な電気を送ることができなければ、大きな被害をもたらしてしまうでしょう。それは分かるのですが、でも、そうだからといって自分たちのために他人が犠牲になったり、辛い思いをしていてもかまわないというのは、おかしいなことです。どこかで何かが狂ってはいませんか?
この地震による被害が思わぬところに出ているといってニュースで話題になっています。自動車の部品工場が操業できなくなったため、トヨタを始めとした日本中のほとんどの自動車工場が生産をストップしているというのです。
地方の小さな(?)工場が、品質で日本のトップクラスの部品を生産し、多くの自動車メーカーに供給しているということを初めて知りました。地元にもそんな優秀な技術をもった会社や技術者がいたんだということを知り、嬉しく思いました。と同時に、複雑な気持ちでもいます。
この工場の再建のために、日本中の自動車メーカーから労働者が派遣され、その数は700名を超えているのだそうです。その結果、23日には操業を再開し、部品が供給されることになるとのこと。生産ラインを止めている自動車メーカーにとっては、朗報になることでしょう。
でも、日本中から集まっているのは、結局は自分の会社のためだけなのではないか、とも思ってしまいます。一方では、いまだ数百人が不自由な避難所くらいをし、倒壊した家の片付けもできないでいる人たちが大勢います。地域の再生は、まだまだ遠い先のこと。その道筋もまだ見えてはいないのではないかと思います。
トヨタは今や世界一の規模の自動車メーカーになりました。空前の売り上げと利益をあげています。生産ラインが止まることが会社としての生命線だという考えなのでしょう。でも、苦しんでいる地域の人たちに目を向け、手をさしのべることがどうしてできないのでしょう。
利益至上主義だ!などと声高(こわだか)に非難しようとは思いません。それが資本主義社会で生き残る鉄則なのでしょう。弱肉強食。でも、そんな論理だけで、この社会が豊かになるはずがありません。人々が幸せになることもないでしょう。
今困っている人たちに真っ先に手をさしのべるような温かい心があれば、被災地にいる多くの人たちを救うことができるでしょう。それが企業の社会的責務なのではないでしょうか。
もっとも、今回の自動車工場の全面操業ストップにいたった原因の一つである「カンバン方式」自体が、大きな問題をもっています。メーカーは在庫をもたず、それを下請けや関連会社に押しつける方法です。ラインの進み具合などからその時々で出される気まぐれな発注指示は、部品メーカーなどに必要以上の負担を押しつけています。
この「カンバン方式」によって自動車メーカーはコスト削減ができ、世界の中で競争できる自動車を作ることができるようになりました。でも、それは下請けなどの犠牲の上でなりたっているのではないでしょうか。そうだとしたら、こういった生産方式は、どこかで改める必要があります。
そんな「カンバン方式」を推し進める人たちにとっては、震災で苦しんでいる人たちの様子は目に入らないのかもしれません。そうだとすれば、何とも悲しい現実が見えてきてしまいます。
日本は、例えば自動車産業では世界のトップを誇っているのに、一方で毎日の生活にも困難を抱えている人たちが以前より増して多くなっている、そんな現実があります。自分だけが良い思いをしたい、他人のことはどうでも良い・・そんなふうに考える人たちが、確実に増えているように思えて仕方ありません。
原発事故のことといい、自動車部品の工場損壊といい、それらの中から共通して見えてきたものは、人間社会の有り様を考え直した方が良いという警告なのではないか、そう私には思えます。
投稿者 tsukada : 2007年07月20日 23:22