2007年08月27日
1枚のワッシャー
たった1枚のワッシャーが、重大な事故を起こしてしまいました。それは先日(8月20日)に起きた中華航空の事故。まだ記憶に新しいです。
ボーイング737ジョット機は那覇空港に到着直後、燃料が漏れて爆発炎上。幸い乗客157名と乗員8名は全員無地脱出できましたが、避難直後に大きな爆発とともに、機体は全焼しました。
乗客の避難する様子、そして炎上する様子がほぼリアルタイムに流され、とてもショッキングでした。そして、燃料タンクに突き刺さった1本のボルトと、それによって空いた数センチの穴を、タンクの中から撮影した1枚のスチール写真も、また衝撃的でした。
フラップと呼ばれる制御装置を固定しているボルトが脱落し、着陸後に格納されたフラップと燃料タンクの壁との間に押しつけられ、タンクに穴を開けたと推測されています。その穴から大量のジェット燃料が漏れ、大事故につながりました。
ボルトはナットで留めますが、それだけでは締め付けが安定しないので、ナット側にワッシャーを敷きます。5円玉に似た形で、真ん中に穴の空いた円形の金具です。そのワッシャーが、今回の事故機にはつけられていなかったというのです。
写真を見ましたが、確かにそうです。ボルトにナットだけが付いていて、そのナット側がタンクに突き刺さっていました。フラップを固定する箇所は、ナットの直径より大きな穴だということで、ワッシャーをつけなければ容易に脱落してしまいます。
では、このミスがどの時点で起きたのか、議論になっています。製造段階から着いていなかった可能性は、どうもないようです。というのは、もし最初から着いていなかったのなら、もっと早い段階で脱落していただろうからです。就航後の整備で見つかっていないということもあります。
おそらく航空会社の整備ミスでしょう。それも、直前に起きたことのようです。なぜなら、着けるべきワッシャーが問題の箇所から発見されたというのですから(他にボルトの脱落を防ぐ部品2つも一緒に見つかっています)。
高速で空を飛んでいるジェット機から、厚さがわずか数ミリ、直径数センチの金具がこぼれ落ちることなく、その場にとどまっていたということは・・整備ミスは、おそらくごく最近起きたものだと想像できます。
そのミスとは、一度外したボルトを着け直す際に、最初は着いていたワッシャーと脱落防止用部品の3点を装着することなく、ナットだけ締めたということになります。そのナットが、空いている穴より小さいものだということは、先にお話ししたとおりです。
明らかに整備員の人為的なミスですが、どうしてこのようなことをしてしまったのか、理解ができません。ボルトにナットを使うときには、ワッシャーは必ず使うものだということは、私は中学校の技術家庭で習った記憶があります。一般人の常識でもありますが、プロとして教育を受けた者が知らなかったということは、ないでしょう。
わざとそうした、という可能性はとても考えにくいです。推測ですが、作業の途中でワッシャーなどが落ちてしまい、それを拾うことをさぼって、残ったナットだけ締めた・・。
こんなことが起きていたとすると、戦慄する思いです。わずか1本のワッシャー(きっと1円もしないでしょう)を着けなかったために、100億円くらいするジェット機が灰になってしまいました。乗客乗員に負傷者が出なかったのが不幸中の幸い。しかし、ほんの数分でも爆発炎上するのが早かったり、避難が遅れていたら、大惨事になっていたことは十分に予想できます。
技術の粋を集めた最新鋭ジョット機であっても、それを整備する者がほんのちょっと間違ったことをしただけで、とてつもない大きな事故につながってしまいます。私たちの社会がより高度になればなるほど、こういったことが起きてしまう可能性がさらに増えてくることを、しっかり肝に銘じておく必要があります。
投稿者 tsukada : 2007年08月27日 23:59