2007年09月15日
説明責任
安倍首相が突然辞任を表明したのが12日(水)。私は栃木に向かう新幹線の中で、そのニュースを知りました。それ以来、日本中が上を下への大騒ぎ。自民党総裁選挙が急きょ行われているのも、ご承知の通りです。
先の会見も異様でした。首相自らが辞任の意志を国民に向かって伝えました。その事実はそうなのですが、辞任の理由が良く分かりません。それらしい言葉を並べているわけですが、その言葉通りに受け取ることができないのは、首相の問題なのか、私たち国民が素直ではないからなのでしょうか。
健康上の問題があって首相の職を続けられないという話もありました。確かにその直後に入院をしています。主治医側からは「機能性胃腸炎」という病名が公表されていますが、これも何か分かったような分からないような説明です。
強いストレスなどから胃腸症状(嘔吐、嘔気、下痢、食思不振、腹痛など)がでるもと、ということだそうですが・・。それが「原因」なのか「結果」なのかは不明です。今、安倍首相の病状としてこういった病態があるのは確かでしょうが、突然辞任せざるをえない状況に追い込まれれば、体調を崩すような大きなストレスに見舞われるのは当然です。つまり、病気を理由にした辞任というのは、必ずしも説明にはないっていない、ということです。
ご自身の記者会見では健康状態については触れていません。周囲が「健康が優れない」と言っていただけです。もし本当に健康状態が辞任の原因であれば、首相は本当のことを語っていないことになります。逆に、辞任の理由が健康状態ではない、ということであれば、周囲は間違った説明を国民に向かって行っていることになります。
いずれにせよ、現職の首相が突然辞任をするという前代未聞の“事件”が起きているにもかかわらず、その理由が正しく説明されていないということは、それ自体がまた「異常事態」だと思います。
“絆創膏大臣”として後世に名を残すことになった赤木・元農水大臣のことを思い起こしてしまいます。記者会見の場に、大きな絆創膏を二つ、顔に貼って現れ、しかも無精ひげのまま。その異様な姿について記者から質問を受けても、「心配には及びません」というだけで、きちんと説明することを拒否しました。数日後、それが毛包炎(毛穴から皮膚内に細菌が入り、感染症を起こしていた)だということを明かしましたが、時すでに遅し。私たちは病気のことにはすでに関心がなく、「大切なことを隠して、きちんと説明しない大臣」という印象を持ってしまっていました。
今回の首相辞任も似てはいないでしょうか。言葉数は多い会見だったけど、私たちが納得できるものはなかった。その「理由」が良いか悪いかは別・・というより、それすらも判断できない程度の内容。そして受けた印象は、「首相は本当のことを話していない」「国民に説明を尽くしていない」というものでした。少なくとも、私にはそう映っています。
病気を口実に入院する手法は、よく見かけます。医者が積極的に荷担している場合もあれば、仕方なく行っている場合もあるでしょう。時には利用されている場合もあるかも。今回のように、確かに体調不良はあるでしょうが、それがあたかも辞任の根本原因だ、などととられるような対応は、やはり問題があるように思います。
政治資金などについて、説明責任を果たさずに辞めていった閣僚の多い安倍内閣でした。その最後の締めは、安倍首相自身の「説明なき辞任」だったことは、この内閣と今の政治を象徴しているかのようです。こんなことをしていて、日本の政治はいいのでしょうか? 日本はどこへ向かうのでしょうか? ただただ不安に襲われてしまう政治状況です。
投稿者 tsukada : 2007年09月15日 12:51