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2007年12月11日

インフルエンザ予防接種の料金

 インフルエンザが例年よりそうとう早くから流行が始まりました。当院でも昨日1人、今日2人のインフルエンザ患者を確認しています(いずれも同じ学校の児童)。これから流行が一挙に拡大していかないか、心配をしています。

 インフルエンザの予防といえばワクチン。その代金をめぐって、皆さんからよく質問を受けます。「医療機関によってその料金が異なるのはどうしてなのか?」

 昨日のこと、よみうりテレビの制作スタッフの方からお電話をいただきました。視聴者の方から同様のご質問が寄せられ、調べているのだそうです。ちなみに私に連絡をとったのは、ネットで検索してこのHPがヒットしたからだそうです(少しはHPのお役に立てているようです)。

 結論から言うと法律に基づかないインフルエンザ予防接種(高齢者をのぞく)は、それぞれの医療機関が独自に料金を決めることになっています。「自由競争」の原理から、価格協定などは禁止されています。また価格を決める際には、医療保険の診察料などを参考にすることが多いのですが、それでなければいけないという理由もありません。

 そんな話をしたのですが、その後「もし医療保険の料金をそのまま使ったらいくらになるか?」という試算もして、番組スタッフにその資料も提供しました。

 以下はそのやりとりの一部です。なお放送はよみうりテレビ(日本テレビ系列)の『情報ライブ ミヤネ屋』(毎週月曜~金曜、午後1:55~午後4:45)の中の「怒りの水曜日」というコーナー(4時ころから10分程度)。早ければ12日(水)、遅くても翌週の水曜には放送予定だそうです。

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【番組スタッフより】今回、視聴者の方から『インフルエンザの予防接種の料金は、なぜ、病院によってちがうんですか?子供は2回打つので、1000円2000円の差額が大変な出費になってしまいます。』とのお便りがあり、その調査に関連して、ご連絡させていただいた次第です。

【私の回答】
<医療保険の料金>
A 診察料
初診料 2,700円【6歳未満 3,420円】
再診料 1,230円【6歳未満 1,580円】
B 注射料 330円
<医療保険に準じてインフルエンザ予防接種の料金を算定>
1回目の技術料 2,700+330=3,030円【6歳未満 3,420+330=3,750円】
2回目の技術料 1,230+330=1,560円【6歳未満 1,580+330=1,910円】

 それぞれにワクチン代金が加わる。 インフルエンザ・ワクチン1本(1ml)は1,800円前後。 これにロス(未使用などによる廃棄分)などを考慮すると1本2,000円ほど。 インフルエンザ予防接種は13歳以上0.5ml×1回、6~12歳0.3ml×2回、1~5歳0.2ml×2回、0歳0.1ml×1回。 1本で複数回できるので、平均すれば1回あたりのワクチン代金は1,000円、またはそれ以下ということになります。 (そのまま保存することができないので、未使用分は当日中に廃棄します)

 仮にワクチンの実費を1回1,000円とすると、インフルエンザ予防接種の代金は次のようになります。 (消費税がかかります。1円単位は四捨五入)

1回目の代金 (3,030+1,000)×1.05=4,230円 【6歳未満 (3,750+1,000)×1.05=4,990円】
2回目の代金 (1,560+1,000)×1.05=2,690円 【6歳未満 (1,910+1,000)×1.05=3,060円】

 さきほどもお話ししたように、基本的にインフルエンザ予防接種は自由診療です。 (65歳以上と、60歳~64歳で基礎疾患を持っている方などは予防接種法に基づく接種) そのため、料金は各医療機関が独自に決めることになっています。 医師会などで統一料金を作ることは「自由競争の妨げになる」として、公正取引委員会より禁止されています。

 また、万一の医療被害が生じた際には、医療機関または医師がその責任を負うことになります。 損害賠償の金額も決して少なくないことを考えると、医療機関側からは「安ければいい」というものではないかと思います。

 そもそも予防接種の料金を「安値競争」させるという性格のものではないようにも思います。 現在はインフルエンザ予防接種は高齢者のみが法に基づく接種になっていますが、この点に疑問を感じています。

 インフルエンザを予防する必要があるのは小児や成人でも同じです。 国がこれらの人たちへの接種についてもその意義を認め、法律に基づく接種をしてくれれば、問題は一挙に解決します。

 その際の実施主体は市町村ですので、医療機関が受け取る料金は自治体が決める「公定価格」になります。 今回のご質問のような医療機関ごとのばらつきはありません。 何より、窓口での負担も大幅に軽減します。 (無料または一部の負担のみ。新潟県では高齢者の接種は1,050円の負担で行っています)

 ぜひその方向になるよう、マスコミも、国民のみなさんも厚生労働省などに働きかけて下さい。

 以上私見を述べさせていただきました。 参考にしていただければ幸いです。

投稿者 tsukada : 2007年12月11日 18:30