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2008年10月06日

ER

 今日の読売新聞朝刊のトップ記事は「ER」について。「あらゆる急患を受け入れて診療」するというERが日本でも全国で150施設に作られ、「たらい回し」防止に役立っているというものです。

 そもそも「ER」が何だか分からないとお話が通じないですね。英語で「Emergency Room」。訳せば「緊急治療室」とか「救命救急室」になるでしょう。

 ふつう病院というと、専門科が多くあって、それぞれが外来診療や入院治療をし、外科系では手術もしています。しかし「急患」は必ずしもそのワクに収まりません。

 とくに時間外の救急患者は、それぞれの専門科が担当していたのでは通常の業務に支障を来しかねません。各科持ち回りで当直をするわけですが、それでは“担当外”“専門外”の患者を診療しなくてはいけなくなります。

 そんな状況から生まれたのがERという形態です。専門科が決まっている患者以外のすべての急患を受け入れます。内科的なものも外科的なものも。外傷治療では腹部外科、胸部外科、整形外科など専門科を問いません。もちろん内科的な病気も同じく、何でも来い!という体制。

 年齢も関係なし。子どもも大人も、そして高齢者も。ときには産科と同じく出産だって。ERは病院のマルチスーパースターなのです!

 医学・医療にとてつもなく広い知識と技術が必要とされます。そして“緊急”の患者さんを受け持つのですから、彼ら(彼女ら)のウデは生命を左右することもあるわけですから、「広く」かつ「深く」でなければいけません。そして「瞬発力」。一刻を争う事態でも、冷静に、そして瞬時に判断し、治療を遂行します。

 そんなERはもっぱら欧米で作られ、制度化されてきました。もともとは各診療科の「専門医」を作って、その集合体として病院を組織してきました。しかし専門医だけでは、一般の患者さんのニーズに必ずしも応えられないことが分かり、専門医制度の隙間を埋める形で「ER」が作られてきた・・私の理解では、そんな経過でできてきたものだと思っています。

 では日本ではどうかというと・・読売新聞が指摘している通り、ちゃんとした制度になっていません。厚生労働省が病院の一部としてERという診療科を認めていない。専門医制度の中で、ER専門医を特別に養成するプログラムが作られてはいない。一部では始まっているけれど、まま“継子(ままこ)”扱いなのです。

 こんなところにも、日本という国が一度作ったものをなかなか変えたがらないという保守的な性格を強くもっていると感じさせます。国民にとって必要があり、良いことならドンドンと取り入れていこう、とは素直には考えられないのですね。

 あたかも鎖国時代が長く続いた江戸末期のよう。開国か攘夷かでもめ、国内で戦争を始めてしまう。日本の外のことを知ることのなく、日本の将来のことを真剣に考えようともしない。ただこれまで続いてきたものが変わったり、なくなってしまうことを脅威に感じ、それだけで冷静さを失い、まっとうな価値判断を放棄してしまう。

 話をもとに戻しますが、こんなERがもっと普及すれば、医療をめぐる環境はずいぶん変わるかもしれません。

 ちなみに今日は同名のテレビドラマがNHKで放送される日です。私が大好きなアメリカのドラマです。先週から始まっているのがシーズン13。1年に1シーズンずつですから、もう13年目ということですよね。ずいぶんと長く続いているのですね。

 ERに勤務するインターン(研修医)やレジデント(指導医)たちの物語。最初のことのスタッフはもうほとんどいなくなってしまいました。一番大好きだったのが小児科医のダグ。まだ無名(?)だったジョージ・クルーニーが演じていました。同じ小児科医ということもありますが、なんといってもクールでかっこいい。まるで自分を見ているよう!?

 彼は急に売れっ子になり、ERの収録と平行してスパーダーマンの主人公を演じていた時期もありました。そしてとうとうERを“卒業”していきました。もう一度帰ってこないものかと、新しいシーズンが始まるたびに期待をしていたものです。

 一番出演が長かったのはカーターという研修医でしょう。シーズン12もまだ活躍していましたので。ERに登場した当時は医学校を卒業したばかりの青年医師。困難な事態にぶつかりながら、しだいに技術をみがき、精神的にもたくましくなっていきます。私自身の研修医時代にも重ね合わせながら、カーター医師の成長ぶりを見守ってきたのかもしれません。

 そんな思いが重なるERの最新シリーズが先週から毎週月曜に放送。ぜったいに見逃す訳にはいきません。今日も楽しみに一日を過ごしていました。(夜間診療所という“ミニER”も苦になりませんよ)

 話は今日の読売新聞から始まりましたが・・あれはNHKの番宣だった!? まさか、そんなことはないですよね。

追加:ERはアメリカではシーズン14まですでに放映され、次のシーズン15が最終になるのだそうです。今のシリーズを含めるとあと3シーズンで終わってしまう。その最後の日を思うと、今から悲しい気持ちになります。それまでに小児科医ダグがまた復帰してくれないかな。看護師のハサウェにも会いたいし。その二人の間にできた子どもは元気にしているかな。もう大きくなったかな。・・妄想はどんどん膨らみます(- -)

投稿者 tsukada : 2008年10月06日 22:10