2008年11月20日
社会的常識
昨日の麻生首相の発言は、私たち医師の間で大きな問題になりそうです。その発言とは・・
全国知事会議で、地方の医師確保策についての見解を問われ、「自分が病院を経営しているから 言うわけじゃないけれど、大変ですよ。はっきり言って社会的常識がかなり欠落している人が多い」「(医師不足が)これだけ激しくなってくれば、責任はお宅ら(医師)の話ではないですかと。しかも 『医者の数を減らせ減らせ、多すぎる』と言ったのはどなたでした、という話を党としても激しく申しあげた記憶があ る」と話したのだそうです(朝日新聞より)。
日本の医療の状況、そして多くの医師が身を置いている現場を本当に知っているのでしょうか。少ない医師数、少ない医療費の中・・ギリギリのところで踏ん張りながら頑張っている医師(とくに勤務医)に対して、言ってしまってもよい言葉なのでしょうか。
もちろん全ての医師が善良であるとはいいません。確かに問題を持っている医師や団体もあるでしょう。でも、日本が今直面している医療問題が医師の責任によるものだとするような発言には、首をかしげざるをえません。
「医師過剰時代がいずれ来るから、医学部定員を減らすべきだ」といったのは、厚生省(当時)の高級官僚でした。「医師が多いと医療費が増え、日本の経済に大きな負担になる」という“医療費亡国論”を信奉したのは大蔵省(当時)でした。
医学部の定員を減らし、医療費を大幅に削減してきたのは、私たち医師ではなく、政治家であり、官僚です。その責任をいったいどう考えているのでしょう。
「社会的常識が欠落している医者が多い」などという話を、日本の政治の最高責任者の口からは聞きたくはないです。そっくり“のしをつけて”お返ししたいと思います。「日本には社会常識の欠落した政治家と役人が多い」と。
でも、もしかしたらこんな反応があるかもしれません・・お前の口からは聞きたくない、と。
言葉は虚しいものだと思えてしまうときもあります。もっと言葉を大切にしてほしいものです。
投稿者 tsukada : 2008年11月20日 18:30