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2008年12月01日
誇りに思えること
先月「朝日新聞」からインフルエンザについて電話で取材を受けたお話は先月もしています。子どもたちをインフルエンザから守るためにいっしょう懸命、第一線で奮闘している小児科医・・という意味で取り上げていただいたようです。そんなふうに見ていただいたことがとても嬉しいです。
新聞などのジャーナリズムは、何かという医者を目の敵(かたき)にします。でも、誤解もあるのだと思います。もちろん、私たちの方も報道する立場を誤解していていたり、簡単に決めつけているとことがあるようです。
そんな意味でも、ジャーナリズムに嫌われることの多い開業医の話を丁寧に聞いてくださったことに、感謝しています。
もう一つ、私にとって嬉しいことがあります。それは朝日新聞が予防接種の大切さを取り上げ、紙面に書いてくれたことです。今回の記事は子どもたちにニュースをよく知ってもらい、教育に役立ててもらおうという趣旨ですから、予防接種の是非を真っ正面から取り上げるというものではありませんが、それでも考え方が変化してきたのだと感じました。
今から9年前、私は朝日新聞に投稿し、「声」欄に掲載されました(1999年12月4日)。インフルエンザの予防のために積極的にワクチン接種を行ってほしいし、それが行政の責任だという内容です。(このHP内の「院長の著作集」に掲載されていますので、ご興味のある方はぜひお読みください)
昔も今も、私は同じことを言っています。多くの小児科医にとっても、当たり前のことであって、ことさらに取り上げることではないようなものかもしれません。しかし、私の一文を掲載するにあたっては、朝日新聞の編集部の中でいろんな議論があり、問題になったのだと聞いています。
事実の経過をお話しておきます。私が最初に投稿したのは「声」欄ではなく、「オピニオン」というコーナーにでした。専門的な内容をより詳しく書くことができる欄です。そして、投書はその欄への掲載が決まったと連絡を受けました。
しかし、その直後、「インフルエンザ対策として予防接種を行うのは慎重に」というある小児科医の意見が掲載されました。このMさんはワクチンに対して否定的な考えをお持ちの方です。(昔も今も、という意味でのガンコさは私といっしょです)
とてもマスコミに影響力のある方で、私の比ではありません。そんな方の意見が取り上げられたということで、編集部の対応が一変しました。同じ欄に、別の意見を載せることはできない、と言ってきたのです。
それがマスコミの掟(おきて)なのか、大新聞の対面なのか分かりませんが、一度取り上げた意見は新聞社の意見でもある、というのです。憤慨したものです。直接にも抗議しました。このやり取りを、小児科医のメールリンクの中で逐一流したので、何人もの小児科医が全国から朝日新聞の編集部に電話をしてくださったということも、あとで聞きました。
その後編集部では、私の投稿を取り上げることに方針を変更しました。ただしコーナーをかえて、「声」欄にということでした。最初の原稿を大幅に少なくし、形はMさんの意見を受けて、ということになりました(私はMさんより先に書きあげたあったのに・・)。
そんな“騒動”を経験しているので、同じ朝日新聞からインフルエンザ予防接種について取材を受けるというのは、感慨深いものがあるのです。「十年一昔」といいますが、10年ほどの歳月が流れ、時代の方向が少しずつ変わってきた、ということなのでしょうか。
先月、朝日新聞の記事を紹介するときにこんなこともお話しようかと思っていたのですが、忙しさにかまけてすっかり忘れていました。でも今日、“東京メトロ”の話を聞き、また思い起こしました。
みんなに知ってもらいというより、自分のために書いたような気もします。子どもたちのためにブレることなく仕事をしてきたことが、ちょっと誇らしく思えたしだいです。
投稿者 tsukada : 2008年12月01日 23:00