« 3月です | メイン | こども通信最新号 »

2009年03月02日

懐かしき紙カルテ

 今日は3月の第1月曜・・お決まりの夜間診療所勤務です。インフルエンザの流行が下火に向かいつつあるためか、利用者はそれほど多くありませんでした。私にとっては負担の少ない勤務・・地域の人たちの健康状態も、それほど悪いものではないともいえるでしょう。

 私は月に1〜2回の勤務ですが、関わってきた年数はずいぶん長くなりました。私が開業した翌年度から休日診療所の勤務は「医師会員の義務」として行われています。1990年に開業しましたので、18年間続けています。

 休日診療所は当初は日曜・祝日だけでしたが、途中から土曜の夕方も行い、今年度からは平日夜も“店”を開いています(名前は「休日・夜間応急診療所」に変更)。

 これだけ長い付き合いをしていると、“他人の診療所”ではありますが、だんだんと違和感がなくなります。自分の職場のように使うこともできるようになっていました。

 でも、最近はまた違和感を多少おぼえるようになってきました。それは・・カルテを手書きするからのようです。

 以前は私も自分の医院でそうしていました。ボールペンをいつも使っているので“ペンだこ”もできていました。能率化のために多くのハンコを使うのですが、手にスタンプがついて、夕方にはだんだんと青くなりました(スタンプ台は藍色がお好み)。

 しかし、昨年秋に電子カルテにしてからは、ハンコはほとんどなくなり、ボールペンを握る時間もぐんと少なくなりました。パソコン上の“仮想カルテ”の中に、キーボードとマウスを使って、主に文字を書き入れていきます。

 医者の悪筆は古来有名なことなのだそうです。忙しいから、というのが古今東西、万国共通の医者のいい訳です。私はそれに加えてもともと習字など、文字を書くような練習を子どものころにしていなかったこともあります。

 中学生の頃には、きちんとした文字を書くのがいやで(正確にはできなかったのですが)、“丸文字”で書くように練習をした覚えもあります。おかげで全く威厳のない文字になってしまいました。(国語学者の兄には、「お前の字で死亡診断書が書かれても、ありがたくない」と言わしめたことがあるくらいです)

 それでもカルテというものは自分がボールペンを握って書くものと、以前は思っていました。電子カルテの導入が、その“常識”をガラッと変えてくれたわけです。ついでにいえば、医者のカルテは汚い字でもめないものという過去の“常識”を180度変えてくれましたが。

 そんな私が、夜間診療にきたときには、以前とおなじく手書きのカルテに向かい合っています。なんだか懐かしいような感じもします。と同時に、やっぱりこの字では他の人には読みづらいよな、と改めて実感したところでもあります。

 医者の書いた指示などがなかなか読めないので、経験豊富な(?)職員が“通訳”をするという伝統が、あちこちにあるようです。あるいは新人教育の一つは、医者の書いた文字の判読なのだとか。まるで古文書? それとも暗号文?

 電子カルテを使うと、誰でも読めるし、情報を共有できる環境になります。実にこの違いは大きなものがあります。それを、夜間診療所で実感しています。

 私の手はインクで汚れることは皆無になりました。頻繁にアルコールでふくのでガサガサではありますが、真っ青にはなりません。ペンだこもなくなりました。

 でも、キーボードのたたき過ぎで、10本の指先がだんだんと固くなってきているようです。もし腱鞘炎になったら、どうやって入力すればいいのだろうと、ふと不安になることもあります。そのときには職員に代行入力してもらうことになるかも。

 さらにこの「院長ブログ」もどんな運命が?? 以前一度音声入力を試してことがありますが、間違いが多かったりして、けっこう難しかったですよ。今ではソフトが良くなって、簡単になったかな・・。

 いざというときのために、順儀をしておいた方がよいのかな。

投稿者 tsukada : 2009年03月02日 22:15