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2009年05月01日

弱毒が幸いです

 5月になりました。世の中GWというのに、連休気分にはなれないでいる方が多いことでしょう。インフルエンザ騒動が影響しています。

 当地ではまだ従来のインフルエンザが流行中。A型もB型も混在です。こんな“季節外れ”の流行を経験したことはありません。いったいどうしたというのでしょう。

 そして新型インフルエンザが、もしかしたら日本にも上陸し、患者発生が始まるかもしてないと状況。ニュースで逐一報道だれていますが、とても他人事ではありません。

 新型インフルエンザはすでに普通に人から人に感染を拡げる性質を獲得したようです。日本国内でもいずれ流行することは明らかです。現在空港などで“水際作戦”を展開していますが、それは日本への侵入を遅らせる効果があるだけ。完全に防ぐことはできません。

 メキシコではすでに3月ころから新型インフルエンザが流行していたとのこと。もしかしたら今までの間に日本にも持ち込まれていて、今私たちが目の前にしているインフルエンザ流行の一部が新型インフルエンザによるものかもしれない・・そんな推測もあります。

 今すでにそのようになってはいないとしても、いずれそうなる可能性は十分にあります。新型インフルエンザの毒性が通常のインフルエンザと同じ程度だとも言われていますので、従来のウイルスと混在していた場合には、それらを区別することは簡単にはできません。

 日本でも早ければ5月中、遅くても6月中には新型インフルエンザの流行が始まるのではないか、と個人的には思っています。その備えをしておかねければいけないでしょう。とくに“国民的行事”であるGW大型連休で、国内に新たに新型インフルエンザのウイルスが持ち込まれたり、“民族大移動”でごちゃまぜ状態になってしまうのではないか、と一人で危惧しています。

 政府の示したガイドラインでは、新型インフルエンザの治療は一般の医療機関では行うなとあります。地域の中で指定された特定の病院だけが受け持つと。ほんの少数の発生であればそれもできるかもしれませんが、流行が拡大すればとても対応できないでしょう。

 一般の方にとっても、もし発熱などの症状があっても、それが新型インフルエンザによるものかどうかを推測するのは簡単ではありません。いずれ人から人にどんどんと拡大していくのですから、海外への渡航歴もなく、どこで移ったかわからないのが普通だという状況になるでしょう。

 そうなれば、その人たちはかかりつけの医療機関を受診するのが自然の流れ。それを阻止することはできません。しかし、新型インフルエンザをきちんと治療できる医療機関は、まずないでしょう。私のところもそうです。

 新型インフルエンザといえども、従来からのインフルエンザと同じ程度の症状ですむのであれば、何とか診療できるかもしれません。検査キットや治療薬(タミフル、リレンザ)が十分に確保されれば、開業医でも対応できるかもしれません。

 しかし一挙に感染爆発といえる状態になれば、どれくらい機能できるか、自信がありません。職員も新型インフルエンザに罹患し、仕事につくことができなくなる可能性も十分にあります。家族で患者がでたということで休まなくてはならなくなるものもいるでしょう。学校などが休みになれば、子連れで出勤するなどということもできないでしょう。

 何より、医師である私が新型インフルエンザにかかってしまったら、当院の医療活動は一瞬にしてストップします。開業医は、毎日綱渡りをしながら診療をしているようなものなのです。

 これから起こりうることをいろいろと考えていくと、先が真っ暗になっていきます。幸いなことは、今回の新型インフルエンザが比較的に弱毒であることでしょう。うまく乗り越えることができれば、とても良い経験になります。なれならば、いずれ強毒性の鳥インフルエンザの流行がおきるからです。

 危機管理能力を高めておくためにも、今回の新型インフルエンザ流行は多大な貢献をしてくれることでしょう。“本番”を前にして、良い“練習”ができる・・そんなふうにも考えています。

 いろんな知恵をだしあいながら、新型インフルエンザにきちんと備えていきたいと思っています。でも、とりあえず必要なのは、現在流行している従来のインフルエンザ流行に対処すること。そして、明日の外来を乗り切るために十分な睡眠時間を確保すること、です。

投稿者 tsukada : 2009年05月01日 23:59