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2009年05月10日
「狂犬病」3話
昨日は面白い日でした。「狂犬病」について、3回も話題にのぼったのです。
第1話は患者さんからの電話。数日前に犬に噛まれたが、狂犬病のことが心配。近くに保健所で獣医さん(?)に相談したところ、当院でワクチン接種をうけるように勧められたとのことでした。
確かに当院は珍しく狂犬病ワクチンを扱っています。もちろん人に対するワクチンです。「珍しく」というのは、日本ではほとんど行われていないから。新潟県内では3つの医療機関が狂犬病ワクチンの接種を行っています(うち1つは検疫所なので、病医院は2つだけ)。
しかし当院でもほとんど狂犬病ワクチンの接種は行っていません。なぜなら、日本の国内では狂犬病の発症はまず心配ないからです。第二次世界大戦のあと、狂犬病対策を徹底したために(飼い犬の予防接種と、野犬の捕獲、検疫の強化など)狂犬病を撲滅することができました。
今後、外国から入ってくる可能性もありますので、これから先も絶対に大丈夫とは言えませんが、少なくとも現時点では犬に噛まれても狂犬病になる可能性はないと思ってもかまいません。ワクチン接種をきちんと受けている飼い犬はもちろん、野犬などでもそうです。
もっとも犬に噛まれると狂犬病にはならなくても、傷から雑菌が入って化膿することがあります。すぐに傷を流水と石けんであらい、その後医療機関を受診し、アルコールで消毒するなどの処置をきちんと受けて下さい。傷が深くて大きくても、化膿することを防ぐためにすぐには縫合しないのが原則です。(噛まれた傷は犬だけではなく、他の動物でも同じ対処が必要です。人間の歯も例外ではありません)
電話ではそんなお話をたっぷりとして、ご心配を解消してもらいました。
第2話は、かかりつけの獣医さんのところで。我が家のワンちゃんに狂犬病の予防接種をしてもらいに出かけました。体調のチェックをし、狂犬病ワクチンと「8種混合ワクチン」の接種をしてもらいました。
その時に、狂犬病の話がでて、日本では50年ほどは患者発生がないことなどを教えてもらいました。さきほど私の電話での説明も間違いがないことを、専門の獣医さんからお墨付きをもらえたようです。
代わりにといってはおかしいですが、今問題になっている「新型インフルエンザ」のことをいろいろとお話ししてきました。ウイルスのこと、今の対応のこと、今後の見通しなど。
ワンちゃんそっちのけでずいぶん長く話し込んでいました。収穫の多い受診でした(^^)/
そして第3話がまだあります。レンタルしてきたDVDの中に出てきたのです、狂犬病が。アメリカのTVドラマのシリーズです(タイトルを言うとネタバレになってしまうので、内緒にしておきます)。診断がなかなかつかず、ナゾが多い患者さんなのですが、最後に狂犬病だということが分かったというものです。
狂犬病はもし発症すると死亡率はほぼ100%。これまで生還した患者さんは世界で数名だけなのだそうです。とても怖い感染症。有効な治療法はまだ見つかっていません。世界では毎年5万人以上の方が、狂犬病のために命を落としています。
日本では狂犬病の発生はないと書きましたが、実は心配なこともおきています。予防接種を受けていない飼い犬が増えてきているとのこと。今の良い状況があるのは犬の予防接種をきちんとしているから。もし今後、接種率が低下してしまえば、日本でも狂犬病が発生することも十分に考えられます。
決められたワクチン接種をきちんと受けてもらうことの重要さは、犬も人間も同じなんだな、と思ったものでした。
投稿者 tsukada : 2009年05月10日 18:41