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2009年05月21日

あなたは専門家?

 今日も新たな地域で、新しい新型インフルエンザの患者さんが確認されました。こんご首都圏でも流行がはじまり、ほかに地域への拡大していくおそれは十分にあります。

 兵庫県や大阪府の流行の様子はすでに「まん延期」といえる状態。新型インフルエンザ患者は特定の医療機関だけが担当し、甘受はすべて入院させるという政府の方針は、すでに“時代遅れ”となっています。

 検査についても、疑わしい患者についてはすべて遺伝子検査をし、確定させるという方針をまだ曲げてはいないようです。現場で何がおきているか、分かっていないのでしょうね。マスコミの質問に「WHOに人数を報告しなくてはいけないから」と厚生労働省の担当者が答えたというのですから、あきれます。木を見て森を見ず。

 それだけの労力と検査キット、そして予算があるのなら、今後発生しそうな地域にまわした方がよっぽど有効でしょう。兵庫県や大阪府がサンプル調査に切り替えようとしていますが、現実に即した対応がどうしてできないのでしょう。

 学校、幼稚園、保育園の休校(休園)の処置についても同じです。同じ市町村の中で一人でも患者発生があったら一斉に休みにする・・政府が自分で決めたマニュアルを、なんとしてでも守ろうとしていることに怒りすら覚えます。アメリカでは流行が始まった当初は休校するようにという指示をだしていますが、新型インフルエンザの性質がしだいに分かってきたため、その必要はないと、方針を変更しています。わずか数日で方向転換です。

 日本の対応のまずさが目立っています。水際作戦と称して、検疫を強化しましたが、時間稼ぎはできたのでしょうが、でも素通りしていた患者さんはいました。むしろ国内体制の整備が遅れたために、関西での大きな流行につながった可能性もあります。

 検疫については、WHOなどの専門機関は、かなり早い段階から「流行を防ぐことはできない」として否定的でした。それよりも、いずれおきる国内の流行に対応するように求めていました。日本があえてその方針を採用しなかったわけは何だったのでしょう。

 ついでに、あの検疫官の服装や防護のための道具についても批判があります。ものものしい格好をしているのは、新型インフルエンザから検疫官を守ろうとしてのこと。でも、もともとそれほどの重装備をする必要のあるウイルスではなかったようです。さらに、あの格好で仕事をしている中で、一人でも患者がいた場合には、それ以降に接触した人たちは「検疫官を通して感染が拡がる」可能性があります。

 そうならないようにするには、乗客一人ひとりに対して、ガウンなどはすべて使いすてにしなくてはいけません。使い回しの結果は、検疫をしなければおきなかった新たな感染を人工的におこしてしまうことにもなりかねません。検疫官をまもるための検疫体制?

 おかしいことは山ほどあります。マスクもそうです。患者がほかの人に移さない効果は一定の範囲であります。だから、熱をだしていたり、咳をしていたりしたらマスクを着用するよう指導することは意味のあることです。

 しかし、感染を予防する効果はさほどありません。普通の方々にマスク着用をうながしているのは、気分的な効果以外にはほとんど意味のないことです。

 どうも日本の対応が医学的に正しくなかったり、非科学的であったり、あるいは変更の時期が遅れていきがちなのは、対応している人たちが専門家ではないからです。桝添大臣は連日記者会見をしていますが、彼は政治学者であり医師ではありません。厚生労働省の中には医師が「医系技官」として働いていて、具体的な対策を作っていますが、彼らも医療の現場を十分に知っているわけではありません。感染症対策のトレーニングを受けた専門家というのも、ほとんどいないようです。

 政治家や官僚が必要になる場面もあるでしょう。しかし、感染症対策の陣頭指揮ができるのは専門家です。役人や政治家は、自分たちのすべきことと「してはいけないこと」、あるいは「まかせるべきこと」とわきまえるべきなのです。

 新型インフルエンザ対策を見直すと大臣は言っています。今週中にするそうです。強毒性新型インフルエンザを想定して作られた対策は、より柔軟なものになるでしょう。でも、そのスピード感のなさが問題なのです。役所が対応するからこうなってしまいます。もっと専門家チームに、具体的なことをまかせる体制にはならないものでしょうか。

 こんなことをやっていると、役所がつくったマニュアルを、役所のために後生大事に守り抜くことだけが危機管理の目的になってしまうのではないかなどと思ってしまいます。そんな思いが杞憂であることを、ぜひ証明してください。

投稿者 tsukada : 2009年05月21日 23:59