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2009年06月10日
パンデミック前夜
日本では流行の拡大がとまって、目前の危険がとりあえずなくなったかに見える新型インフルエンザ・・しかし南半球では大流行になってきました。オーストラリアではすでに1,000を超えたそうです。
北半球では夏に向かっていますが、南半球は季節が逆。インフルエンザ・ウイルスが大好きな寒い季節になってきました。おそらく今後さらに多くの患者発生があり、大流行になることでしょう。
WHOは新型インフルエンザの流行規模を現在のフェーズ5からフェーズ6に引きあがる方針だそうです。パンデミック=世界的な大流行になったという判断です。(ちなみに「6」は最高段階)
これまでの流行が北半球、とくに北米大陸(メキシコ、アメリカ、カナダなど)が中心でしたが、ほかの大陸や地域でも大きな流行になってきたというのがその根拠。今後は世界中のどの地域や国で流行が始まってもおかしくない状況です。
WHO内部では以前からフェーズ6への引き上げは検討されていたのだそうです。とくに日本での流行が、関西の高校生を中心に一挙に拡大するかに見えていたころがそうです。結果としてこの時はそのままフェーズ5のままでいましたが、今回は違うようです。(発表は明日、正式に行われる見通しです)
しかし、フェーズ6になって、直ちに何かが変わるわけではなさそうです。今回のブタ由来の新型インフルエンザは弱毒性なので、渡航制限もせず、基本的には季節性インフルエンザと同じ扱いでよいとするのがWHOの考え方のようです。
フォーズの決め方は、本来は流行の規模だけを考慮することになっています。新型インフルエンザが強毒であるか、弱毒であるかは関係ありません。SARSやエボラ出血熱など、強力な毒性をもつウイルスでも同じです。
ですのでフェーズ6になったからといって、直ちに怖がる必要はありません。でも・・一般的には、フェーズが最高段階まで引き上げられるとなると、やはりそうとう怖いウイルスだろうと受け取られやすいでしょう。無用なパニックがおきるのも心配だということで、WHOは慎重な態度をこれまでとってきたようです。
日本では、秋以降に「第2波」の流行があることでしょう。それもそうとう大規模に。それに備えるよう、今から着実に準備をしておきたいと思っています。
一小児科医院としては、小児が新型インフルエンザにかかったときの診療体制をきちんと作っておきたい。政府の行動計画では、新型インフルエンザの診療は流行前であれば感染病棟をもっている指定医療機関(大きな病院)が行い、流行期にはできるだけ自宅待機を指示することになっています。でもそれは「絵に描いた餅」。少なくとも小児患者については、まったくあてはまりません。
「発熱外来」が作られても、ただ熱をだしたというだけで発熱外来を受診するよう指示されたのでは、たちまち患者さんであふれてしまいます。行き場所のない患者さんは、いっぱんの診療所や病院に向かうことでしょう。小児科医院は、きっと多くの患者さんであふれかえる事態になりかねません。
新型インフルエンザ患者さんだけを簡単に選び出すことはできません。普通の風邪などと症状からは区別するのは無理でしょう。季節性インフルエンザが流行していれば、検査キットも役にたちません。結局、新型インフルエンザと分からずに診療をすることになるでしょう。
そんな混乱した状態は必ずおとずるはず。問題はいつおきて、その規模がどの程度かということ。迎え撃つことになる小児科医院として、どんな準備をしておけばいいか・・今真剣に悩み、考えています。
きちんとした対策を今からしっかりと作っておかなければ、いざという時にお役にたてないことでしょう。地域の子どもたちを守ることができなければ、何のために小児科医をし、小児科医院を開いているのか、その根本を問われることになりかねません。
手をこまねいているわけにはいきません。持てる全ての知恵を動員して、有効な対策をつくることができないものかと本当に考えています。それがどんな形になるか・・まだ答えは見つかっていません。
でも時間はあまりないと思っています。早急にアクションをおこさなくては。
投稿者 tsukada : 2009年06月10日 23:59