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2009年06月23日

怖い話のでてくる本

 梅雨真っ只中の日本列島。西日本は大雨で大変なことになっているようです。東日本では蒸し暑くて、これもまた大変でした。

 関東では真夏日のところが多かったとか。湿度も高いので、過ごしにくいですね。熱中症にならないように、ほんとうに注意をしていて下さい。

 そんな暑い中、私は肝を冷やすような思いをしています。その原因は・・先日から読み始めたある本にあります。

 といっても妖怪やお化けがでてくるわけでもありません。今大人気のあの小説でもありません。『新型インフルエンザ対策マニュアル』という題名の医学書です。

 強毒性の鳥インフルエンザが発生し、パンデミックになったとしたら、医療機関はどのように対処すべきか、ということが具体的に書かれています。なぜそうなるのか、といった理論づけもしっかりしています。そして、もしきちんとした対応がなされなければどうなるか、といった“予言”も自ずから導きだされます。

 げんざい問題になっている弱毒性の豚由来新型インフルエンザについても、そのままそっくりあてはまります。毒性が弱いだけに、逆に豚由来新型インフルエンザのほうが、私のような開業医には脅威だと、しだいに感じるようになりました。

 なぜなら、強毒性であれば発症後ただちに命にかかわるような重症の症状がでるわけですから、患者さんは病院に向かうでしょう。弱毒なインフルエンザであれば、開業医に診療を求めることになるはずです。

 さらに、弱毒の方が流行がいっきょに拡がるから。強毒では、症状が重いので患者さんはじっとしているはずです。弱毒であれば、普通の感冒や季節性インフルエンザと同じように、広い範囲に出かけ、多くの人たちと接することになりかねないからです。

 ということで、今冬に予想されている新型インフルエンザ流行の第2波のことを考えると、いったい自分に何ができるのか心配になってくるのです。地域の子どもたちの健康や安全に少しでもお役にたてたいと日頃から思ってはいるわけですが、このままでは“空回り”になりかねません。

 先日政府は新型インフルエンザについての行動指針を見直しました。これまでは特定の病院だけが新型インフルエンザの診療をしていましたが、今後は原則としてすべての医療機関が行うことになります。とは言っても、他の患者さんたちと接してはいけないので、専用の外来を設けることが条件です。

 診察室などを完全に分けるか、あるいは時間的に分けるかのどちらかが必要です。小児科外来では、ふだんから一日中“発熱外来”を行っていますので、ある時間帯を新型インフルエンザの診療にあてるというのは、まず不可能でしょう。とくに蔓延期になって、患者数が急激に増加したときには対応できなくなります。

 時間的に区分するのが無理であれば空間的に区分することになります。しかし、小児科外来の様子を思い浮かべていただければお分かりいただけることでしょう。冬場はとても患者さんが多くなり、ただでさえ“いものこを洗う”ような状態です。簡単にできることではありません。

 さらに、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)をどのように確保するべきか。検査キットもそうです。看護師をはじめてしたスタッフも、新型インフルエンザに罹患してしまって休む状況もあるでしょう。私(院長)がかからないですむという保証もありません(“濃厚感染”するので、真っ先にかかるかもしれません)。

 そんなことをいろいろと考えていると、背中に悪い汗が垂れてくるようです。

 新型インフルエンザの流行なんておきないよ、おきてもたいしたことないよ、何とかなるよ・・そんな声もどこかから聞こえてきそうですが。

 いま私の頭の中にある心配が、“夏の夜の夢”で終わってくれればいいのですが。しかしこの本を読む限りでは、全く逆のシミュレーションを予想しておかなくてはいけないようです。

 あと数か月もすると秋、そして冬。インフルエンザ・ウイルスの大好きな季節になっています。その時になって慌てなくてもすむように、後悔しなくてすむように、今できることをしっかりと考え、実行していこうと考え始めているところです。

投稿者 tsukada : 2009年06月23日 23:23