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2009年07月15日

ここ数か月が勝負

 昨日の保健所との会議では、新型インフルエンザが引き起こすであろうパンデミックへの対応も協議されました。

 保健所の方がこれまでの対応を説明し(当地ではこれまでに患者発生がなく、電話相談が主な仕事だったとのこと)、国の新しい指針についての解説もしていただきました。

 国の対応策は内科など、大人の患者が主な対象のような印象があります。すくなくとも小さな子どもたちについて、あるいは小児科について詳しく書いたものがありません。

 指針には「患者:原則として外出を自粛し、自宅で療養。健康観察。」とあります。また「基礎疾患を有する者等:早期から抗インフルエンザウイルス薬を投与・・」ともあります。

 健康な小児が新型インフルエンザに感染した場合には、この指針に従えば、医療機関を受診するべきではなく(外出ができないのですから)、抗インフルエンザ薬(タミフルなど)も使うべきではない、ということになります。

 これは受け入れがたいでしょう。子どもが熱を出しても、新型インフルエンザらしい場合には家でそのまま休んでいてほしいと言っても、無理です。通常の季節性インフルエンザであっても、おそらくほとんどの子どもたちが受診をし、その大部分が簡易検査キットを使って検査を受け、インフルエンザと診断されれば抗インフルエンザ薬を使用しているのが実態です。

 季節性インフルエンザでは行われている医療を、新型インフルエンザの場合には行わない、ということを、親御さんが容易に受け入れるとはとても思えません。

 仮にその方針通りに行おうとしても、インフルエンザであるかどうかを推測することを親御さんに求めることは難しそうです。子どもが熱とだしたけれど、扁桃炎のようだから受診する・・いや、インフルエンザのようだから受診しない・・そんな判断はなかなかできないでしょう。

 診察をする私たち小児科医も難しい判断をせまられます。インフルエンザであるかどうかも、実は発熱から間がないと簡単にはできません。検査キットで陽性になるのは、発症から半日、あるいは丸一日ほど過ぎてからという場合が少なくないからです。

 そして決定的な問題・・それは季節性インフルエンザなのか、新型インフルエンザなのかを知る手段をもっていないということです。

 簡易キットでA型が陽性にでると、これまでは保健所に連絡して、さらにより詳しいPCR検査を行ってもらっていました。結果が判明するのは多少の日数が必要ですから、リアルタイムに診療できるわけではありませんが、それでも知ることができました。

 今後は「全数把握はしない」というのが国の方針。そうなると、通常の外来診療では「インフルエンザ」であるかどうか、までしか分かりません。そして、インフルエンザ患者はすべて同一の対応をすることになります(それしかできません)。

 結果として、やはり新型インフルエンザに限った特別な診療体制を作ることは、理論的にも実際的にも不可能だというのが、私たち小児科医の今の考え方です。

 そんなことを保健所の方にお話ししました。地域ごとの特性もあり、実際にそくした指針や行動計画を策定すること、そしてそれを急いで行うことがとても重要だという点は、きっとご理解いただけたのではないかと思います。

 保健所の方は、おそらくこの10月くらいにはパンデミックが当地域でも始まるだろう・・そんな見通しのもとに自分たちは仕事をしている、とおっしゃっていました。あと4か月もありません! それを聞いて、当院での対応をもっとスピードアップしていかなくては、とも思ったしだいです。

投稿者 tsukada : 2009年07月15日 17:35