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2009年07月19日
夏山での遭難
北海道大雪山系で大きな遭難事故がおきました。悪天候の中で遭難し、10名もの方が亡くなりました。死因は皆さんが凍死。中高年向きのツアーだったとのことで、亡くなった方は大半が60歳台でした。
当日は北海道を低気圧が通過し、猛烈な風雨にさらされ、まるで冬山のような状況だったとか。さらにいろいろな要素が加わり、最悪の事態になったようです・・旅行会社が企画したツアーで、現地で初めて会う方が大半。ガイド3名中2名は初めてのコース。比較的年齢の高い方が多かった。日程に余裕がなかった(予備日を作っていなかった)。本格的な冬山用の装備は求めていなかった。
自然が大好き、山歩きが大好き・・そんな方々が参加されたのでしょう。きっと体力にも自信があったのかもしれません。でも、やっぱり自然は脅威になることもあります。事故に遭われた方のことをとやかく言うのはしのびないのですが、でもどこかに間違いがあったのではないでしょうか。
この事故のニュースを聞いて思い出されるのが『八甲田山死の彷徨』という小説です(新田次郎著)。明治35年(1902)1月23日に青森県で実際におきた事故をもとに描かれています。
冬山での訓練のため、弘前の第31連隊が冬の八甲田山を踏破する行軍訓練に出発。210名の参加者が雪道で迷い、最終的に199名が亡くなったというものです。その原因は厳しい気象条件のほか、稚拙な装備(換えの手袋すら持っていなかった)、指揮系統の混乱、情報不足などがあげられています。
今回起きた北海道での悲劇とは違う部分も多くあります。季節は片や夏で、片や冬。民間人と軍人。中高年と青壮年。参加者のことをお互いがほとんど知らない団体と、規律のしっかりしている軍隊。近代装備が可能だった人たちと、最初から貧しい装備しかできなかった人たち。
そんな違いはあるけれど、荒れ狂った自然の中で放り出されれば、最悪の事態になってしまうのは同じです。十分な事前の準備がなかったのも同じ。登山や行軍に困難な状況が出てきたとき、それをきちんと認識し、中止したり引き返したり、すぐに救助を求めるという慎重さがなかったのも同じ。
片はレジャー、そして片や練習。命をかけてまでしなくてはいけないものではありません。結果として多くの方の命が粗末に失われたことを、深い悲しみとともに憤りを感じます。
同じようなことが今後おきないよう、しっかりと教訓にしてほしいものです。それでなければ、失われた魂が救われることはないように思います。
投稿者 tsukada : 2009年07月19日 19:44