2009年08月19日
流行宣言、そして・・
新型インフルエンザと思われる流行が各地で拡大しています。政府は沖縄、奈良、大阪などで流行が本格的に始まっているとして「流行宣言」をだしました。
今日は3人目の死亡も報じられていました。80歳代の方で、血液の病気をもっていて、心不全も患っていて、新型インフルエンザによる重症肺炎をおこしてことが死因につながったとみられています。
この方の入院した病院では、入院患者2人、治療にあたった研修医1人、看護師3人の計6人が新型インフルに感染した疑いがあるそうです。院内感染を引き起こしてしまいました。
治療にあたる医師や看護師は「濃厚接触」をするわけですので、二次感染を受ける可能性が大です。新潟市民病院でも研修医ばかり7名が新型インフルエンザの感染を受けました。同じ部屋で机をならべているので、きっと一人の研修医からほかの研修医に感染が拡がったのでしょう。
(ちなみに新潟市民病院は私が研修医時代にお世話になった病院。昨年、新しい建物になりましたが、当時はちょっとお粗末な建物。研修医室は机と書棚をぎっちりとおいてあり、もしものことがあっても出入り口までなかなかたどり着かないような構造でした。あえて「たこ部屋」とは言いませんが・・。そしてこの古い建物を利用して、映画「感染列島」は撮影されました。)
私たち医療従事者は、感染を受けるリスクが高いわけですから、よほど十分な予防対策をしておかなければいけないとつくづく感じています。
そしてさらに気になるニュースがあります。「新型インフル 沖縄・神奈川で子ども4人が重症」(今日の「朝日新聞」インターネット版)です。沖縄で3人(1歳、11歳、13歳)、神奈川で1人(6歳)が新型インフルエンザに感染し、その後重症になり、治療を受けているという内容です。
一人のお子さんは喘息の持病がありましたが、そのほかの子どもたちには基礎疾患もなかったようです。肺炎、心筋炎、脳症など、重症度の高い合併症をおこしてしまったようです。一日も早く回復されることを願っています。
高齢者の死亡が続いていましたが、このような小児の重症化例が発生していることを、小児科医として深刻にとらえています。新型インフルエンザが流行してしまうことはもう避けようのないことです。でも、重症になってしまうことは何としても避けたい。
新型インフルエンザの診断を的確に、早く行い、治療を開始する。重症化している様子がみられたら、高度の治療ができる病院にすぐに搬送する。そういったことを丁寧に行うことで、不幸な結果になる子どもたちを少なくしたいと思っています。
致死率が0.5%ほどといわれている新型インフルエンザ。さほど多くはないように思えるかもしれませんが、季節性インフルエンザが0.1%ですので、その5倍。もし日本国内で1,000万人が新型インフルエンザにかかったとしたら5万人が亡くなります(5,000万人なら25万人の死者!)。感染の規模が大きければその影響は想像を絶絶します。
そしてその死者の中に子どもたちも少なからず入っている・・。次の世代の担う子どもたちが、新型インフルエンザによって命を奪われたり、思い後遺症におちいったりすることは、少しでも回避したいものです。
夏休みという時期でこれだけのトラブルがでています。9月に入り、学校や園が再開して子どもたちが集団生活を始めたら流行が一挙に拡大することは明らかでしょう。本当に心配です。
投稿者 tsukada : 2009年08月19日 21:43