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2009年11月07日
10ml容器のナゾ
新型インフルエンザ予防接種が始まっています。先月は医療従事者に、今月からは基礎疾患のある方や妊婦さんが対象です。
当院でも今週から本格的に接種を行っています。まだ季節性インフルエンザ予防接種が終わっておらず、むしろそちらがメイン。そこに新型インフルエンザ予防接種が入ってきていますし、お子さんによっては同時接種もあります。現場は混乱気味です。
混乱に拍車をかけているものに「10ml容器」という問題があります。
季節性インフルエンザワクチンは1ml容器に入っています。1回の接種量は成人(13歳以上)0.5ml、6〜12歳が0.3ml、1〜5歳が0.2ml、ゼロ歳が0.1ml(新型ワクチンはゼロ歳には接種せず、それ以外の年齢での接種量は季節性ワクチンと同じ)。小さな容器であれば、少ない人数で使い切りますので、現場では使いやすいものです。
ところが新型ワクチンは、1mlのほかに10ml容器もあります。県が医療機関にどちらのワクチンを何本にするか割り当て、問屋に指示し、納品されます。今週、当院に届いたのは主には10ml容器。
10ml容器は使い勝って良くありません。幼児(1〜5歳)は何と50人分になります! 小学生では33人分、中学生以上(成人も)でも20人分です。それだけ多くの方に、いっせいに行う必要があります。(厚労省からは、開封後は24時間以内に使い切るよう指示がきています)
10ml容器にすることで、ロスが少なくなり、より多くの方に接種ができるのだと説明されています。でも本当にそうなのか、疑問です。もし、例えば幼児だけなら一度に50人接種しなければ、残りは破棄されます。極端には最大幼児49人分が、使われず無駄になる可能性もあります。
1ml容器には実際は1.2ml入っています。注射器にワクチンをつめるときに、針先に液が残るので、余分に入れておく必要があるのだそうです。
でも計算上ではすべてを10ml容器にしたところで20%、見かけ上増えるだけです(10ml容器を1ml容器10本分として)。実際には半分ほどを10ml容器で生産するということですので、10%の増加です。これが果たして多いのか、それほどではないのか。
10ml容器にしたことによって破棄されるワクチンが増えれば(確実に増えるわけですが)、むしろ接種人数が少なくなることになりかねません。(ワクチンは医療機関の買い取りで、返品は認められていません。破棄するとそのコストはすべて医療機関の持ち出しです)
新型ワクチンは、今はまだとても貴重。もし余って、捨てるようにあってはもったいない・・そんな精神で、ぎりぎりまで使い切りました。ムダがでないように予約を調整するのも、けっこう大変です。今日は最後に少しだけ残ったので、急きょ連絡をして来ていただいた方もおられました。
完全にカラになった10ml容器をながめて、最後の1滴まで子どもたちの健康作りに役立てることができたことを、とても嬉しく思いました。
でも疲れました。こんなことに神経をすりへらしているのが医療の現場だってことを、厚労省のお役人たちは知らないでしょうね。
投稿者 tsukada : 2009年11月07日 19:06