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2009年12月11日
日本という巨体
「濃厚接触者」・・新型インフルエンザが流行し始めたころにはよく耳にした言葉です。まだ弱毒性であることがよく分かっていなかった頃には仕方なかったかもしれません。周囲への感染を拡げないために、ある程度の製薬は必要だったのでしょう。
でも今は違います。弱毒性であることが分かり、季節性インフルエンザと同じ程度に対応すれば十分ということになってきました。
しかしまだ対応が、初期のように「厳重」にしているところもあるようです。家庭内で新型インフルエンザの患者発生があると自宅待機を求めている会社があります。インフルエンザにかかっていないことを証明してほしいといってくる親御さんもおられます。
私たち医者も、もしマスクをせずに診察したら、それだけで「濃厚接触者」とみなされ、診療からはずされていました。防護は必要ですが、今ではそんな単純な対応が求められてはいません。(もしそのようにしていたら、新型インフルエンザを診療できる医者はいなくなってしまいます)
それなのに、今でも「濃厚接触者」という言葉が一部ではまだ生きているようです。まるで妖怪のように(>_<)
日本では一度決めたこと(決められたこと)はなかなか変わらないようです。それぞれの個人や会社などがきちんと考え、対応することは難しいのでしょうか。
実は当の厚生労働省が、今では「家族内に新型インフルエンザ患者がでても、本人の健康状態に問題がなければ仕事につくことはかまわない」といっています。(厚労省のHPに、10月30日付けのQ&Aが掲載されています)
厳しい対応をすることで、社会全体にまん延することを防ぐ効果はあるでしょう。でも・・すでに大きな流行になっています。国民の1割以上がかかっているわけで、いつまでも厳重に対応する必要があるのか、疑問です。それに、そんなに休ませることによって、むしろ社会生活が成り立たなくなる方が問題なのではないか、とも思えてきます。
新型インフルエンザ・パンデミック(地球規模の大流行)の際には、従業員の4割が休むものとして、企業は危機管理マニュアルを作るよう求められていました。でも「4割」というのは、強毒性を想定した数字。本当は弱毒性ですし、実際に4割もの職員が一挙に休んだという例はこれまでにはないようです。
企業活動を維持するために作れたマニュアルが、変更されることなく、当初のままであるとしたら、それも大きな問題です。政府自体の危機管理能力が欠如しているといわざるをえません。
ウイルス解析を専門にされている先生にお聞きすると、新型インフルエンザが発生した当初から「弱毒性」であることは分かっていたということです。鳥インフルエンザのような強毒性ではないので、日本の対応は最初から必要以上のことをしていました。
そして、今もって方向転換できずにいるところがあります。日本という巨体が、小回りをきかせることができず、体中をきしませながら必死にコーナーをまわろうとしているのでしょう。
願わくば、オーバーランすることなく、無事まわり切ってくれますように。そして、正しいコースを走りきれますように。
投稿者 tsukada : 2009年12月11日 23:20