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2010年01月18日

集団接種

 昨日は上越市で行っている新型インフルエンザの集団接種にでかけてきました。医師会員が持ち回りで出務することになっています。

 新型の予防接種は個々の医療機関で行うのが原則です。でもスムーズに進みませんでした。当初はワクチンの供給量が少なく、一方で希望者が多くて、予約をとるだけで大混乱になりました。

 受けられない方が多いこともあり、市では幼児を対象に集団で接種するように計画しました。12月下旬から始まり、今月いっぱい続きます。

 接種の希望者を募ったところ、市が予想した人数の半数以下。ワクチンが余ることになったので、対象を小学3年生まで拡大したという経過があります。

 希望者が少なくなったのはいくつかの要因があるでしょう。すでに個別に医療機関で受けた方が、市の予想より多かったのでしょう。新型インフルエンザに罹患してしまい、予防接種を受ける必要がなくなった方も多かったのかも。あるいは、ワクチンの必要性を感じず接種を受けさせないでいるご家庭もあるのでしょう(実際にはそれほど多いとは思えませんが)。あるいは、経済的な負担から、接種をあきらめた方もいるかもしれません。

 当初の見込みより大幅に少なくなったのがどうしてなのか、ぜひ知りたいところです。

 実は私はこの集団接種に対しては、やや複雑な思いを持っています。接種の機会を広く提供し、より多くの子どもたちにワクチンを受けてもらえるという意味では、大賛成です。

 しかし、当初のワクチン不足がそもそもの問題でした。新潟県では12月初めから幼児に対する接種を始めましたが、十分なワクチンが提供されませんでした。全体としてはワクチンはあったのかもしれませんが、肝心な小児科に集中してワクチンを供給するという施策はとられず、すべての診療科に幅広く、漫然とワクチンを供給していました。

 この集団接種について協議するある会議で、この点が大問題になりました。私だけではなく、他の小児科医も、ワクチンさえあればもっと多くの子どもたちに接種ができると訴えました。供給の「公平性」についても問題にしました。集団接種をするだけのワクチンが別にあるのなら、それを小児科にまわすことはできないのか、とも。

 それに対する行政の返事は、集団接種に使うワクチンは国から別枠で配分されるものだということでした。県としてはどうしようもないのだと。どうも行政の論理が分かりません。

 ある方が発した言葉で、最後は決まりました・・「ワクチンがあったら、小児科で全部できるのか」と。

 確かにその時、事態はすでに泥沼化していました。ワクチンが足りないことから、予約すら受けることができず、そのため、よけいに保護者の不満は高まっていました。きっと市の担当課へは、そんな声がたくさん寄せられていたことでしょう。

 すでに議論をしている段階ではない、という認識では一致していました。そしてその一言で会議は実施方法の検討に移りました。

 でも、すっきりした議論ではありませんでした。小児科医の努力が足りないから、集団接種をせざるをえなくなった・・そんなふうにも聞こえました。そんな趣旨での発言ではないのは分かっているのですが、でもしっくりこない。どこかでボタンを掛け違えてしまったように感じていました。

 そして昨日、私は集団接種に出務。市の予想通りにはなりませんでしたが、それでも多くの子どもたちが接種に訪れていました。診察をしながら、ワクチンを受けられて良かったね、という気持ちもいだきました。

 その一方で、あの会議での発言がまた頭をよぎりました。もっと早くワクチンが小児科医に集中的に供給されていれば、かかりつけの小児科医のところで接種を受けられたのではないのかな。集団接種をする必要もなかったんじゃないかな。

 そんな複雑な思いをもちながら、帰宅しました。

投稿者 tsukada : 2010年01月18日 16:49