« 敵失 | メイン | 今週の感染症情報 »

2010年09月17日

されど爪切り

 看護師が高齢者の爪を切り、その結果ケガをさせたことが罪にあたるのかどうかが争われた裁判で、昨日「無罪」判決がだされました。看護行為として適切であり、問題はないというものです。

 老人の爪を切ったことがありますか? 経験のある方はわかると思いますが、なかなか難しいものがあります。硬く固まった爪はペンチが必要。切り過ぎれば出血させることもあります。もろくなってボロボロと崩れたり、ときにはそのまま剥がれることも。

 私も父の爪を切ったことがあります。慣れない私には簡単にはできませんでした。長い期間そのままになっていて厚くなった爪を、恐る恐る削ぎ落としていきました。

 それほどになっていたのには理由があります。介護ケアをお願いしていますが、爪切りはできないと断られ続けていたのです。爪を切るくらいで、どうしてそんなにナーバスになっているのか不思議なくらいです。

 高齢者にとっては、爪ケアは単に美容上の意味だけではなく、病気を予防する意味でも大切。日頃から「きれいに」しておく必要があります。そんな行為が、あたかも医療行為あるいは看護行為であるかのように説明していた厚生労働省の責任は重いと思います。

 そして看護師が爪をケアし、その結果ケガをさせてしまったことに対して厳しく刑法上の責任を追及してくる・・この国は私たちをいったいどうさせたいのでしょうか。何もしないのが一番いいのだと、暗に示しているかのようです。

 今回の無罪判決は、リスクを負いながらも勇気と優しさをもって人々の健康や福祉のために頑張っている医療従事者をしっかり認め、後押ししてくれます。

 故意や重大な過失によるものでなければ、結果だけで責任を追及されるのは社会正義に反するのだと思います。もしそんなことが正しいとされれば、誰もリスクを負うことはしなくなるでしょう。それはひいては、人々、そして社会に悪影響を与えることにもなるでしょう。

 そんな意味で、この判決のもつ意味はとても大きなものがあります。

 ところで・・私は今でも爪切りで困っています。我が家の愛犬が爪をなかなか切らせてくれないのです。ちょっと長めに切ると出血することもあります(深爪?)。嫌がるので押さえつけると、私の腕をその長い爪で引っかくこともあります。

 まさか、こんど爪切りで血が出てしまったら「傷害罪」で捕まるなんてことはないでしょうね(犬なので「器物損壊罪」になるのかもしれませんが)

 ほんとに爪切りはむずかしいというお話でした。

投稿者 tsukada : 2010年09月17日 23:45