2012年09月25日
納得!の一冊
(「なぜ日本経済は世界最強と言われるのか」 ぐっちーさん=山口正洋著、東邦出版)
ぐっちーさんは銀行投資家で、経済についての評論家でもあります。かねてより、日本の経済は強いと主張していて、ほかの評論家やマスコミの論調とはそうとう異なった見方をしています。
彼の論調に接したのは、『週刊アエラ』(朝日新聞)の連載です。経済の話を読むことはあまりありませんでしたが、彼のコラムはいつも楽しみに読んでいます。以前から連載されていたのだと思いますが、気になり始めたのは1年ほど前から。
新聞紙上などでは盛んに、日本経済は最悪、破綻寸前と声高に叫ばれています。政府の財政を立て直すために消費増税は必要。借金を孫の代に残すな。円高になると輸出産業が打撃を受け、工業立国である日本の経済は大打撃を受ける。などなど・・。
そんな論調を毎日のように聞いていて、そうなんだろうな、と漠然と思っていたのですが、ぐっちーさんのコラムを読むようになって、もしかしてそれって違うのでは、という疑問がおきてきました。彼が言うように、日本の経済は実はしっかりしていて、心配するような事態にはならないのではないか・・。
この本は彼の初めての著作だそうです。これまで(ここ3年間ほど)有料配信していたメルマガなどに加筆し、一冊にまとめたものです。手にしてから一気に読んでしまいました。
やっぱりそうなのか! とくに円高については、そのどこが悪いのか、と主張し、「円安誘導」を愚かな行為と断じています。確かにそうです。日本経済が世界から信用され、高く評価されているからこそ円高になるのですから。円高になることで輸入価格が低くなり、原材料も安くなりますし、生活に必要な食料品も安くなってきます。
輸出価格が高くなり、国際競争力がそがれる、世界中の競争で日本は負ける・・そんな見通しにも、そうではないと言っています。日本はもともと輸出で成り立っている国ではない(GDP国民総生産の8割以上は内需、つまり国内消費による)、海外への売り上げが50%以上は東証上場企業3,800社中わずか286社。確かに大企業と言われるところは輸出が多いが、ナショナル、東芝、シャープなどの業績が悪いのは、輸出の関係ではなく、経営そのものの悪化によるもの。
仮に輸出価格が高くなっても、日本の製品は高品質であり、単に価格だけで競争しているわけではない。中国などで安価に大量生産するためには、日本の工作機械が欠かせない(現在、日中間で貿易が停滞しているけれど、日本からの輸入を抑制することによって、実は中国自体が困った状態に陥ってくる)。
こんな感じで、円高こそ、世界中が日本の経済が堅調であり、すぐに崩壊することはないと考えている結果だというのです。やっぱりそうなんだ! 円高で輸入品が安くなり、生活がよりしやすくなることは庶民にとっても良いことばかり。なのに、国もマスコミも、円安に持って行こうとする。自国の通貨の価値を下げようとすることに納得がいきません。
こういったお金についての話が続くのですが、その根底には「日本が世界で一番信用されている」という事実があります。契約したことは、徹夜しても、赤字になっても必ず守る(契約に至るまでの時間は長くかかるけど)。中国の企業では、契約内容を反故にするのは日常茶飯事。安く契約できても、その結果がともなわない。今回の反日騒動の様子を見ていても、やっぱりそんな国は信用されるはずがありません。(中国はさらに共産党独裁で、市場原理ではなく、党の決定で何事も動いていきます。)
日本経済が世界最強と言われるのは、実は日本が一番信頼されているから。真面目で、協調的。学力レベルもそうとう高く、勤勉。そんな国民性を、世界中が認めてくれているということです。
どちらかと言えば自己否定感の強い日本人。でもけっこうしっかりしているんじゃない! これまでやってきたことを、そのままやっていけばいい。過去も現在も否定されてはいないし、その必要はないんだ。
自己肯定感を得ることができた・・それがこの本からの、一番大きな収穫と言っていいでしょう。
門外漢の私でも、ぐんぐんと引き入れられる内容です。もっといろんな内容が書かれているので、ぜひご一読を。きっと日本の経済、日本という国、そして自分たち日本人に対して違った見方ができるようになると思います。
投稿者 tsukada : 2012年09月25日 19:03