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2013年10月14日

より有効な防火対策に

 先日、福岡県のある整形外科医院で患者さんなど10人の方が亡くなるという火事がありました。たいへん痛ましい事故でした。

 火事の経過が少しずつ分かって来たようです。出火原因は診察室の窓際に置かれた温熱器具のショートのようです。患者さんに使う温湿布を温める医療器具が2つ置いてあり、夜間も電源を入れたまま。

 さらにその1つの温度センサーが壊れていたようで、熱くなりすぎないように気をつけていたという職員の証言もあるようです。

 さらに、この器具はもうずいぶん古いという話もでてきました。それを壊れたまま使っていたとなると、出火原因に対して医院側の責任も問われることになるでしょう。

 でも今回の火事が大惨事に至ったのは、別な原因があります。全ての方の死因は「一酸化炭素中毒」(正確には一酸化炭素を吸い込んだために、酸素欠乏に至った)だそうです。火事の炎にまかれたのではなく、その前に「煙に巻かれた」ということです。

 出火場所は1階ですが、患者さんなどは2階以上におられました。もし防火戸(防火扉)がきちんとしまっていたら、この事故は防げた可能性があります。ところが設置してある7個の防火戸は、全て閉まることはありませんでした。

 その原因はまだ分かっていませんが、報道では4階のものはロープで固定され、閉まらないようになっていたとか。また、作動するかどうかの試験は設置されてから行われたことはないとも。(院長は記者会見で数日前に閉まることを確認したと言い、また温熱器具に不具合はなかったと言っているけれど、正しく事実を伝えていないのではないか、とも思えます)

 1階の防火戸は「熱探知」という旧型の方式だったのですが、それも閉じていなかった・・戸の前に荷物などが置かれていたのか、戸の不具合なのかは後日明らかになるでしょう。

 そしてこの「熱感知」という方式は、今はあまり採用されていないのだとか。医院は何度か増築しているけれど、1〜2階にかけてホールのようなものを造った時に、新しい基準が適応され、煙探知の方式に変えなければいけなかったのに、していないとのこと。

 そもそもこの増築が当局に申請せず、無許可で行われたいたようです。変な勘ぐりかもしれませんが、防火戸の変更をしたくないために、増築の申請もしなかったでは・・。

 その結果、もし防火戸がきちんと作動したとしても、熱感知方式だったため、火災発生当初から有効に働いたかどうかは定かではありません。

 もちろん、初期消火がきちんとできていれば、防火戸のことは問題にならないわけですが、10人以上の患者さんが入院しているにもかかわらず、夜勤職員が看護師ただ一人・・とても十分な体制だとはいえません。

 ここ数日のニュースを見ていると、いろんなことが少しずつ分かって来ました。原因をきちんと解明し、今後同じような事故がおこらないよう、必要な対策をいろんなレベルで行う必要があります。それが亡くなった方々への、せめてもの弔いとなることでしょう。

 ところで・・当院の体制について考えてみました。入院はなく、たとえば夜間に患者さんはいないので、この整形外科とはかなり事情が異なります(入院できる診療所を「有床診療所」といいます。当院は「無床診療所」)。

 昼間だけの診療ですから、職員は十分にいますので、万一の火災の際にも初期消火は職員が備え付けの消火器で行うことができるでしょう。今回はスプリンクラー設置の必要性についても論じられていますが、初期消火のために当院にその施設が必要だということはないようです(法的に設置義務がないことと、任意でも設置する必要性は少ないということについて、当院の設計士と協議し、確認しました)。

 避難についても、小児科という特性が幸いしそうです。親御さんなどご家族の方がお子さんと一緒におられるので、医院側が誘導をしっかり行えば、混乱なく、きちんと避難することができるでしょう。当院は一部2階建てですが、患者さんがおられるのはほとんど1階のみですから、避難経路も比較的十分に確保できるでしょう。

 防火戸の必要性についても、設計士さんと話をしてみました。法的な必要性はもちろんありません。建物の構造上からも、2階への類焼を阻止するなどのために防火戸をつける必要性は少ないと考えられるとのことでした。

 事情が異なるのはわたぼうし病児保育室です。たえず10〜20名ほどのお子さんを毎日お預かりしています。親御さんは付いていないので、避難は全て職員が行うことになります。保育士7名の体制(常勤4名、パート3名)をとっていますし、さらに非常時には医院側から看護師などが応援にかけつけることになっています。

 2つの施設はつながっています。またお互いがトランシーバーを持っていますので、ほとんど一体となって勤務しているといっていい体制を作っています。

 それでも地震や火事などの災害時には、不測の事態も予想しなくてはいけないでしょう。避難などがより確実にでいるよう、日頃からの災害対応の教育にもさらに力を入れていかなくてはいけないと考えています。

 「明日は我が身」、「人の振り見て我が振り直せ」です。決して「対岸の火事」などと高みの見物をしていてはいけません。

 今回の火事による惨事から、私たちもしっかり学び、今後の防災に活かしていこうと思っています。

投稿者 tsukada : 2013年10月14日 22:20