2015年03月28日
はしかが排除状態に
はしかの発生数がこのところ「激減」し、WHOは日本が「はしか排除状態」であると認定しました。これって、すごいことです。
以前は日本でのはしかの発生数はとても多く、年間1万人を超えていました。他の先進国でははしか患者はとても少なくなっていましたので、果たして日本は先進国と言えるのか、不思議がられていました。
そればかりか、自国での発生は抑えても、はしかにかかった患者が日本からやってきたり(日本で感染を受け、海外旅行中に発症する)、そこから二次感染を受けたりする例が後を絶たず、日本は「はしか輸出国だ」と、非難を受けていました。
日本にはしか患者が多かったのは理由がありました。ワクチン接種をちゃんと行っていなかったからです。当時は1回の接種だけでしたし、それすらも受けていない場合も少なくありませんでした。
国は重い腰をあげ、予防接種制度を拡充させました。2008年のことです。「2回の接種」に制度を変え、さらにそれを徹底させました。2回目の接種を行う「年長さん」(小学校入学前1年間)をすでに過ぎている子どもたちにも、中学1年または高校3年のどちらかで接種を行いました。
法律上は「努力義務」ではありますが、ワクチン接種の必要性をしっかりと国民に伝え、生きた制度になるように努力してきました。国や自治体は必要な費用を予算化し、親御さんもよく理解していただいたと思います。私たち医療者も、接種の場を十分確保できるよう色々な工夫をしてきました。
その成果がでました。「排除状態」とは、3年間にわたって国内由来のはしか発生が無い状態をいいます。残念ながらまだ発生がゼロではないのですが、ウイルスの解析をすればそれがどこの国や地域で流行しているものかも分かります。今日本で発生する数百のはしか患者は、海外から持ち込まれたウイルスによるものです。
はしかはワクチンで予防できる・・ワクチンを2回受ければかかない・・みんながワクチンを受ければ流行しない。当たり前のことですが、それを実践するのは容易ではありませんが、日本はそれを成し遂げたということになります。
ところで・・かつて日本を非難していたアメリカは、逆に困った状況になっています。数万人の患者発生があり、自国由来のウイルスもそうとうあるようです。宗教上などの理由から受けていない人たちが少なくないこと。ワクチン接種がどうも徹底していないところがあることなど。
先日、アメリカのディズニーランドで、職員を含む集団発生があったことは、ニュースでも報じられました。この時も、1回しかワクチン接種を受けていない人たちが多かったとのことでした。
日本は「排除状態」になりました。次は「根絶」です。そのためには必要なことは2つあります。1つは、油断せず、このまま予防接種をしっかり続けること。いい加減になってしまうと(接種率が低下すると)、また自国由来のウイルスによる流行がおきてしまうかもしれません。あるいは、輸入されたウイルスが猛威をふるうかもしれません。
もう1つは、世界中でおきているはしかの流行を少しでも小さくすること。それにより日本に侵入してくるウイルスは少なくなり、世界中で同時に「根絶」を目指すことができます(貧困と戦争が最大の敵であり、容易なことではありませんが)。
日本はもう「はしか後進国」ではありません。名実ともに「先進国」として、世界にその影響を及ぼしていきたいものです。
※参考までに・・朝日新聞の記事全文を紹介いたします。
●はしかウイルス「排除状態」に(3月27日)
厚生労働省は27日、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局が、はしか(麻疹)が日本国内で「排除状態」にあると認定したと発表した。2010年5月を最後に、長く流行の中心になっていた土着のウイルスは検出されていないという。ここ数年、年200~500人が海外から持ち込まれたウイルスに感染しており、厚労省は定期接種を呼びかけている。
排除認定は、土着ウイルスが3年間検出されないことが必要。国内でウイルスの感染によるはしかの流行は07〜08年に起き、08年の患者は1万人を超えた。厚労省は08年度〜、定期予防接種の対象に中学1年生と高校3年生を時限的に追加し、5年間で1千万人以上が受けた。その結果、10年以降は感染症は500人を下回る状況が続いている。
西太平洋地域で27日に排除状態が認定されたのは日本など3か国で、これで計7か国・地域になる。中国やフィリピンでは依然流行がある。はしかに感染すると、高熱や全身の発疹が出て、肺炎や脳炎などの合併症で死亡することがある。(田内康介)
投稿者 tsukada : 2015年03月28日 13:51